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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第9章
「さあ、篠宮の得点どうでしょうか?」
刈谷アナがそう発して、しばらくし。
『篠宮さんの得点――75.01。現在の順位は、第1位です』
その場内アナウンスに、コーチとふんふん頷き合ったヴィヴィ。
湧き上がる場内に、立ち上がって両腕を振って応えていた。
「75.01――!! 初戦で高い得点が出ました。もちろんトップに立ちました、篠宮 ヴィクトリア! SPトップで、明日のFSへと折り返します。さすがの篠宮の演技でした」
そこで映像が切り替わり。
次いで映し出されたのは、バックヤードを歩いて来る、ヴィヴィの姿。
タオルでぺぺっと汗を拭うと、テレビカメラとアナウンサーの前で居住まいを正す。
「篠宮 ヴィクトリア選手です。お疲れ様でした」
「はい、お疲れ様でした~」
演技直後、少々ぼ~とした表情で、ぺこりとお辞儀する姿が映し出される。
「演技が終わって、笑顔も出ていましたが?」
「え~……、落ち着いて出来たと、思います」
疲れているのか、ぼんやりした返事のヴィヴィに、男性アナが突っ込んでくる。
「トリプルアクセルは、どんな感触でした?」
「ええと……。ちょっと、本来の軸より、ほんのちょっとだけ前傾になって……。強引に降りちゃって……。まあ、今日は失敗とかでは無く。しっかりとした形でのジャンプでしたので。明日に繋がるジャンプだったとは思います」
言葉を選び、最後に口角を上げたヴィヴィ。
「演技全体を見ても、観客の皆様が引き込まれる演技だったと思いますが?」
「あ~……ええと、そうですね。タンゴ、なので」
「タンゴというと、どういうところを工夫されているのですか?」
「ん……と、ああ、そうだ。今日は「ワルイ女になって誘惑してやるぞ~」って思いながら滑ってました」
そのあっけらかんとした回答に、周りのスタッフから笑いが起きる。