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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第9章
「篠宮自身には、パーフェクトな演技ではなかったかもしれませんが。それでもシーズン初戦でこれほどの演技を見せてくれました」
「はい。冒頭のアクセルの回転が、しっかりと出来る状態まで仕上がっているというのが、高評化にも繋がってくるでしょうね。技術点だけでなく演技構成点にも “高難度のプログラム”を滑っている部分で評価されます」
両手が花で塞がり、リンクサイドへ戻って来た生徒を、
白髪のコーチは「よくやったねえ」と言わんばかりに、目尻を垂らして迎え入れていた。
「さあ、スロー映像です。冒頭のアクセルの着氷……。両足で降りたか、見極めが難しかったですが――」
画面に映し出されたのは、360度から撮られたアクセルの踏切。
「はい……。ああ、きちんと片足で降りれていますね。回転もギリギリ足りているように見えますが、ジャッジがどのような評価をするか……」
慎重な物言いをする荒河に、刈谷アナが補足する。
「それでも他の選手はやりませんからね。3回転アクセルの基礎点は8.5あります。それをプラス3からマイナス3の、7段階で出来栄えを評価される訳です」
次いで映し出されたのは、残り2つのジャンプ要素。
「コンビネーションは、加点の付く素晴らしいものでした」
「そして、最後の3回転フリップ。スパイラルからロッカー、カウンター、スリーで……なんて、シニアではお目にかかれない、複雑なステップからのジャンプ。そして余裕を持った着氷――」
ジャンプを踏み切る直前、くるりくるりと前後を入れ替える足元と、
着氷後、滑らかな軌道を描くシルバーのブレードが、アップで映し出されていた。
「篠宮本人も、熱心にスロー映像を確認し、今、ショーンコーチと大きく頷き合いました」
キスアンドクライに落ち着いたヴィヴィは、日本代表ジャージに身を包み。
テレビに向かって軽く両手を振っていた。
ちなみに、男子シングルSPが直後に控えている為、クリスの姿はそこには無い。