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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     

「………………」

(いかんいかん……。最近、口悪くなってきてるな、私……orz)

 そう自分を窘めたヴィヴィは、華奢な肩を竦め。

 次のレクチャーの為、席を立ったのであった。





 そんな ささくれ立った(?)ヴィヴィの心を癒してくれるのは勿論、

 毎日掛けられてくる、匠海からの電話だった。

『SPの、後ろ脚を跳ね上げる仕草、色っぽくていいよな~』

 日本の朝の爽やかな空気を身に纏う、兄のその言葉に、妹は灰色の瞳を更に輝かせた。

「ほんと? 嬉しい~♡」

 SPのテーマは “タンゴ”。

 特にアルゼンチン・タンゴは、酒場で娼婦が男を惹き付ける為に踊ったとも言われており。

 その特徴的な振付を褒めて貰えるのは、やっぱり嬉しい。

 それが、最愛の男からなら、尚更――

 なのに、

『ああ。あの挑発的な瞳にゾクっとして。思わず「どうかスケート靴で踏んで下さい、女王様」って、言いそうに――』

 ヴィヴィが思っていたのとは真逆の匠海の返しに、思わず「変態っ!」と喚けば。

『あははっ』

 白い歯を零しながら笑う画面の向こうの兄は、心底 愉しそうだった。

(スケート靴で踏まれたいなんて、どこのドMだ~~っ!?)

 というかブレードで、服も肌も切れるかも。

「てか……。お兄ちゃん、ま、まさか……SM、好きなの……?」

 恐る恐る問いながらも「好きだから、したい」と懇願された後の事など、何も考えて無かったヴィヴィ。

『え? SM? う~~ん。痛いのも熱いのも嫌だし。「この白豚っ」って罵られても、嬉しくも何とも無いけど――』

「そ、そう……」

 兄の返事に、心底 安堵したのも束の間。

『ああ、でも。ヴィクトリアがボンテージ着て、俺の上で鞭 振りながら、愛らしく跳ねてくれれば――』

 そんな無茶な要求をしてくる匠海を、

「この変態っ!!!」

 ヴィヴィは速攻、一喝してやったのだった。

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