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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     



「ヴィクトリア選手! 世間を騒がせている噂は本当ですか?」

「篠宮さんっ 世界中が、貴女の口からの説明を求めていますよ!」

「待って下さいよ。何か答えられない訳でもあるんですか?」



 向けられる幾本ものマイクと、カメラのフラッシュ、眩し過ぎる照明。

 11月25日(土)。

 朝練を終え、オックスフォードSCから出て来たヴィヴィを取り囲んだのは、英国・日本・フランスのマスコミだった。

 SCの警備員と女子マネージャーに庇われながら、急遽手配した黒タクに乗り込み。

 記者達を振り切って公道に出た車内。

 後部座席のヴィヴィは、細い両腕で頭を抱え込んでいた。

「ヴィヴィ、大丈夫? 気分悪い?」

 女子マネのその問いに、俯いたままの唇から発されたのは、

「王子……。ぶっ殺す……っ」

 そんな、物騒な唸り声だった。





 話は3日前に遡る――



 出会いから10日間。

 ず~~~っとヴィヴィに付き纏うフィリップの言動に、異を唱える者が複数名 出てきた。

 それは、

 一国の皇太子妃の座を狙う女子達。

 そして、

 フィリップのガールフレンド達。

 だった。

 彼女達が王子に対してアタックする or 詰め寄る のは、解かる。

 しかし大概の場合 女達の矛先は、己の目の上のタンコブ――

 そう、ヴィヴィへと向かう羽目になる。


「あんたが篠宮? ちょっと、フィリップに色目使ってんじゃないわよっ!」

「ヴィクトリア……。貴女のその貧相な躰じゃ、百戦錬磨の彼を満足させられるとは、到底 思えないのだけれど?」


 面と向かって凄まれること多数。

 “女性としての価値ゼロ” 的な、遠回しの忠告を受けること多数。

 
「えっと……。色目と言うより、視界にも入れたくもないのですが……」

「童顔・ぺちゃぱい・出るとこ出てない――なんて、言われんでも自覚あるわ、ぼけぇ~~っ」


 ――なんて。

 本当は咽喉元まで出掛っていた言葉を飲み下し。

 ヴィヴィはひたすら、下手に出ていた。


「はい、ごめんなさい」

「本当に。自分でもそう思います」


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