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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章
翌 12月27日(水)も、双子は仕事に追われていた。
来年から日本へ本格進出する、本格オーガニック・スキンケアブランド――Lady Violet(レディー ヴァイオレット)のCM撮りが長引き。
松濤の篠宮邸に戻り、爆睡したかと思えば、
その翌日の28日。
羽田空港8:50発の飛行機で、ようやくロンドンの地へ戻り付いた。
約10日ぶりとなる、オックスフォードの我が家。
夕日を浴びたレンガ造りの二階建て、その懐かしい青い玄関扉の前に立てば、
「ただいま……」
自然と出てきた言葉と共に、安堵の吐息を漏らした。
簡単に荷解きをし、朝比奈が用意してくれたアフタヌーンティーを楽しんでいると、
同席していたクリスは、どうやら9時間の時差にやられたらしく、早々に船を漕ぎ始めた。
「クリス、夜練まで少し横になれば?」
今にもイスからずり落ちそうな双子の片割れを、苦笑交じりに促せば。
「……ん、……眠くて、死にそう……」
しきりに欠伸を噛み殺していたクリスは、妹そっくりの大きな瞳を擦りながら、2階の私室へと戻って行った。
「ダリルは、マンチェスターに帰ったんだよね~?」
おかわりしたジンジャーティーのカップを、両手で包みながら尋ねれば、
クリスのカップを片付けていた執事・朝比奈は、白手袋をはめた手を止めた。
「ええ。来年の8日までは、ご実家で過ごされるようですよ」
「そっか~。朝比奈は30日から、フランスのご両親のところへ?」
双子が元日にイタリアで行われるアイスショーに出演する為、その間の4日間は、
普段 長期の休みが取り辛い執事にも、休んで貰う事になっていた。
「ええ。まあ、どうせ戻りましても「結婚は?」「孫は?」とせっつかれるだけなのですが……」
双子より18歳も年上の朝比奈は、どうやら実家に戻る度に肩身の狭い思いをしているらしく。
その様子を ありありと思い浮かべたヴィヴィは「あははっ」と明るい笑い声を立てたのだった。