この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章
その一因には、各国メディアから「国籍問題は?」「もう心の中では選択しているの?」と追い回されていたのもある。
更には某国の皇太子との仲を、未だに詮索してくる者までいて。
(だ~~か~~ら~~っ 「まだ決めてない」し「王子とは何もない」って、何度も何度も言ってるのにぃ~~っ)
相手も仕事なので仕様が無いのだろうが、1年の中で一番大事な時期に周りに騒がれたヴィヴィは、少々へそを曲げていた。
「ふはぁぁあああああ~~……」
本番用にメイクを施した赤い唇から、重苦しい息を吐き出せば。
「ふは……っ! でっかい溜息」
会場の通路の一角。
そこで始めたアップに付き添っていた柿田トレーナーが、可笑しそうに吹き出した。
「す、すみません……、つい」
トレーニングウェアの肩を竦め、謝ったヴィヴィに、
「幸せ逃げるぞ~~?」
と、べたな突っ込みを寄越す柿田。
「……しあわせ……?」
不思議そうに ぽつりと零したヴィヴィは、軽く首を傾げたのち、
組んだ両手を頭上へ挙げ、大きく伸びをして気分を切り替える。
「そろそろ、衣装に着替えてきますね~」
「はいよ~」
(いかんなあ、集中力無いなぁ……、後30分で滑走なのに……)
編み込んだ金の頭を引っ掛けぬ様、気遣いながらトップスを脱いだヴィヴィは、
数人の女子選手達と同じく、割り振られたロッカーの前で青衣装に着替え始める。
泣いても笑っても、今日がヴィヴィにとっての最終日。
今シーズンの世界トップを決める、大事な試合だ。
特に、学業の為に四大陸選手権への出場を断念しているヴィヴィには、この大会でポイントを獲得し、
自身の持つ世界ランキングも維持し続けねばならない。
長袖の袖口とスカートの裾が山吹色の青衣装。
肌色のブーツカバータイツを踝にわだかまらせたまま、スニーカーを履くという、ちょっと間抜けな恰好のまま更衣室を後にする。