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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章      

 その一因には、各国メディアから「国籍問題は?」「もう心の中では選択しているの?」と追い回されていたのもある。

 更には某国の皇太子との仲を、未だに詮索してくる者までいて。

(だ~~か~~ら~~っ 「まだ決めてない」し「王子とは何もない」って、何度も何度も言ってるのにぃ~~っ)

 相手も仕事なので仕様が無いのだろうが、1年の中で一番大事な時期に周りに騒がれたヴィヴィは、少々へそを曲げていた。

「ふはぁぁあああああ~~……」

 本番用にメイクを施した赤い唇から、重苦しい息を吐き出せば。

「ふは……っ! でっかい溜息」

 会場の通路の一角。

 そこで始めたアップに付き添っていた柿田トレーナーが、可笑しそうに吹き出した。

「す、すみません……、つい」

 トレーニングウェアの肩を竦め、謝ったヴィヴィに、

「幸せ逃げるぞ~~?」

と、べたな突っ込みを寄越す柿田。

「……しあわせ……?」

 不思議そうに ぽつりと零したヴィヴィは、軽く首を傾げたのち、

 組んだ両手を頭上へ挙げ、大きく伸びをして気分を切り替える。

「そろそろ、衣装に着替えてきますね~」

「はいよ~」



(いかんなあ、集中力無いなぁ……、後30分で滑走なのに……)

 編み込んだ金の頭を引っ掛けぬ様、気遣いながらトップスを脱いだヴィヴィは、

 数人の女子選手達と同じく、割り振られたロッカーの前で青衣装に着替え始める。

 泣いても笑っても、今日がヴィヴィにとっての最終日。

 今シーズンの世界トップを決める、大事な試合だ。

 特に、学業の為に四大陸選手権への出場を断念しているヴィヴィには、この大会でポイントを獲得し、

 自身の持つ世界ランキングも維持し続けねばならない。

 長袖の袖口とスカートの裾が山吹色の青衣装。

 肌色のブーツカバータイツを踝にわだかまらせたまま、スニーカーを履くという、ちょっと間抜けな恰好のまま更衣室を後にする。

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