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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章      



 では “取るに足らぬ人間” は、何の為に必死になるのか?

 運命に負けんと立ち向かおうとするのか?


 全25曲あるカンタータ。

 その1曲目と25曲目に歌われるのが、この「O Fortuna――おお 運命の女神よ」

 最初と最後に “繰り返す” ことで “運命の車輪は永遠に回り続ける” ことを示している。


 では逆に、足掻こうとしなければどうなるか?

 そうすればきっと、

 ずっと運命の車輪の下敷きにされ、苦渋に満ちた報われぬ日々を送るだけ。 

 それだったら、

 例え一瞬でも、己の夢と理想に向かって必死になれる方が どれだけましか――


 そうか。

 ああ、だから。

 自分は今、こんなにも我武者羅に己と戦っているのか。


 例え、その先に待ち受けるのが、

 運命の歯車によって狂わされた、

 渇望と失望しかない、

 地獄の様な日々だとしても――



 ラスト。

 リンクの端。

 青く彩られた目蓋を瞑り、両腕を肩高に伸ばしたヴィヴィ。

 長大なオケの余韻を楽しむ指揮者か はたまた 運命の女神の威厳を湛えてか。

 両の掌を上へと掲げ、

 今季最後の演技となる、4分間の滑走を締め括った。



 オーケストラの音が途絶える前から、場内には割れんばかりの拍手と、足を踏み鳴らす音が轟いていた。

 そんな騒がしい中、最後の音までは きっちり耐えていたヴィヴィ。

 大きく喘ぐ、薄い胸板。

 滑りを止めた瞬間から噴き出していた、粒の様な汗。



 お、終わった……。

 何とか、戦い抜いた……。

 ちょっと……ううん、少し休んで。

 リセットして。

 いい加減 “己” と “孤独” に向き合って、

 強く逞しく、生きていかなきゃ――



 ヘロヘロと氷の上に両手を着いたヴィヴィは、そのままペタンと へたり込み。

「はぁ~~、つか、れ、た……☠」

 「最終滑走だから もういいっしょ?」と半ばヤケクソ気味に、激しく消耗した身体を冷たい氷で癒し。

 四方八方から投げ込まれる花とプレゼントの中心で、脱力していたのだった。



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