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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章
もはや顔面蒼白・冷や汗だらだら状態で、暗黒病棟を睨み上げるヴィヴィの顔は見られたものじゃなかったが、
もちろんプロのカメラマン達は、しっかり “へたれヴィヴィ” を撮り続けていた。
「僕に抱き着いて、目を瞑ってれば、終わるから……。ね……?」
己のジャケットの背にへばり付いている妹にそう囁いたクリスは、半ば強引に細腰を抱き寄せてきて、
「お! でかしたクリス!」
「わぁ~! 実はここ、前からすっごく来たかったんだ~♡」
双子の兄の手柄に沸いた面々は、平日だというのに長蛇の列を成す一般客の目の前、
撮影用に取られた時間を一刻も早く楽しみたいと、病棟の入り口へと駆けて行く。
「ク、クリスぅ~~っ ばな゛じでぇ~~っ!!! (((;゚;Д;゚))) 」
兄に片腕で抱えられた状態のヴィヴィは、必死の形相で抵抗する。
「う~~ん。可哀想だけど、テレビだし、ねえ……」
(たまにドSだけれど)いつもなら こんな強引な手段には出ないクリスは、
申し訳無さそうに呟きながらも、ずんずん病棟に近付いて行く。
けれど、双子の脚が1歩 入口に踏み入れた途端、
「………………」
何故か急に びたりと静かになったヴィヴィ。
「「「「…………?」」」」
皆が不思議がって振り返った視線の先には――
双子の兄の足元に、文字通り へたり込んでいる妹がいた。
「ちょ……っ ヴィヴィ!?」
「ど、どしたの??」
泡を食ったトモエと粋(すい)が、慌ててヴィヴィの元へ飛んでくるも、真っ青な薄い唇から零れたのは、
「こ……腰、抜けたぁ……☠」
そんな、間抜け過ぎる呟きなのだった。