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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章

一瞬「お兄ちゃんの為に、クーラーに新たなシャンパンを入れて置いた方が良い?」と思ったものの、
結局そうする事も無く「ふわわ」と一つ大きく欠伸を零し。
とっとと寝てやろうと、2階へと続く階段を上がった。
しかし、そこでふと足を止めたヴィヴィ。
というのも、そこにはバストイレ完備のベッドルームが6個もあり。
そしてその部屋の内の4ヶ所で、10代の頃の自分は何度も、あの兄と――
「………………」
すっぴんの唇が真一文字に結ばれ、今となっては目を背けたい記憶を追い出すように、ふるふると金の頭が振られる。
改めて踏み出した脚は、そのまま長い廊下を突き進み。
一番奥にあたる1室のドアノブを捻り中に入れば、そこにはシングルベッドが2台並んでいた。
兄と関係を持っていた頃は、全く使わなかったツインルームは2部屋あり。
その内の1つを選んだヴィヴィは、躊躇無くドアの内鍵を掛けた。
ちなみに「ちゃんと掛かっているか」を確かめる為、試しにドアノブを回してみたが、鍵が開くことは無かった。
『話がしたいだけなんだ……。取って喰ったりしないから、安心して』
そんな言葉、今更信じられる筈も無い。
本当に話がしたいだけならば、深夜営業の個室居酒屋、その辺のホテルの1室でも済ませられた筈。
しかしそうせず、わざわざ過去の営みを思い起こさせる この葉山に連れて来たという事は、
匠海の中に下心があるという現われであろう。
(どうせ……もう、私には何も、逃げられるすべがない……)
既成事実を収めた画像――そんな印籠の如き効果絶大な弱みを握られているのだ。
「抱かせろ」と言われても、抗うすべの1つすら持ち合わせていない。
(だからと言って「はい、そうですか」って、素直に言うこと聞くと思ったら大間違いなんだから……っ)

