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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章

「………………」
あれですか?
お兄様は “壁抜け” なんて怪しい奇術まで、お使い遊ばすんでしたかしら?
それとも、あれですの?
実は針金ひとつで どんな鍵も開錠してしまう、コソ泥でいらしたのかしら?
小さな頭の中、らしくもないマダム言葉で、すやすや安眠しやがる匠海をこき落とす。
でないと とんでもなく卑しい言葉使い、かつ大声で兄を罵倒してしまいそうだったから。
前頭葉にモワンとした痺れを覚え、ぎゅ~~うと目蓋を閉じ蓄積した疲労を散らす。
黒魔術でも超能力でも、ましてやピッキング能力のおかげでも無い。
この男は始めから、別荘中の部屋の鍵のありかを知っていたのだ。
だから、いくらシャンパン1本を開けて爆睡していたとはいえ、物音がすれば起きる筈の妹に気付かれる事無く、
簡単に隣のベッドで寝るなんて芸当をやってのけてしまったのだろう。
思わず漏れそうになった深く重いため息。
しかしそれをここでやれば、確実に匠海を起こしてしまいそうで。
釈然としない思いはそのまま、そろそろとベッドを抜け出したヴィヴィは、抜き足差し足忍び足――でツインルームから退室し。
(くっそぉ~~っ なんで、なんで私がぁ!?)
そう己の徒労を愚痴りながら、1階へと続く廊下を進むのであった。
咽喉の渇きを覚え、直行したキッチンからミネラルウォーターを調達する。
贅沢をいえば庭に茂っている筈のミント類を浮かべたら、更なる爽やかさも味わえるのだろうが、
一面ガラス張りの1階フロアには、まだ朝日も差し込んでいなかった。
広大なリビングに配されたソファーに、苛立ちも込めてドカリと座り込んだヴィヴィは行儀悪く胡坐をかき、
コップに移すこともせず、直接ペットボドルから水を煽る。
(一体、何なのさっ!? もう、あの人の考える事は、ホント理解不能……っ)

