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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章

旨そうな匂いのせいで どんどん増幅していく空腹感に苛まれ、意味不明な将軍ごっこ(?)を繰り広げるヴィヴィだったが、
しかし次いで匠海が掛けた言葉は、容赦の無いものだった。
「何言ってる。消費カロリーに見合った分 ちゃんと食べないと。それともあれか? これ以上 体脂肪落として男にでもなりたいのか?」
「……~~っ!?」
体脂肪率7%のツルペタ女子に掛けるには あまりに酷い言葉に、金の頭はブンっという音を立て背後を振り返る。
(……ん゛だとぉ!? やん゛のがごる゛らぁ~~!?)
アイランドキッチンのカウンター越し。
兄と妹は10秒ほど睨み合っていたが、
先に視線を外したのは「この別荘には乾パンは無いわな」と悟ったヴィヴィだった。
愛らしい顔を不服そうに歪め、用意された席に憤慨しながら腰を下ろせば、
隣の席に腰掛けた匠海は安堵したのか、微かに息を吐いた後「いただきます」と両手を合わせ食べ始めた。
むすっとしながら箸置きに置かれた箸を取り上げたヴィヴィ。
しかし次の瞬間、苛立ちを滲ませていた双眸が きょとんとしたそれに変化する。
(な、なにこれ……?)
漆器に盛られた味噌汁。
よく見慣れた何の変哲も無いそれの中に、ありえないものが鎮座しているではないか。
未知との遭遇に動揺しつつ、食い入る様に碗を覗き込んでいると、
妹の様子に気付いたらしい兄が口を開いた。
「ああそれ? この前 山形・庄内地方の新人君と、社食で隣になってね。こんなのがあるって教えて貰ったんだ」
(山形……? 庄内地方……?)
「飲んでごらん。きっと面白い味がするから」
未だ碗に手も付けず、じ~~と見ているだけのヴィヴィはそう促され、両手で漆器を取り上げて おずおず口を付けたのだが。
見た目と味とのギャップに、大きな瞳は更に見開かれた。
「…………っ!?」
(なんだろう、この味は……?)

