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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章

思わず両腕で頭を抱え込んだヴィヴィに対し、浮世の情けか はたまた 新たな罠への誘導か。
匠海から差し出されたのは、更なる救いの手だった。
「じゃあ、本当に最期の最期。 “泣きの一回” しようか」
「…………え…………?」
「ああ、ジェンガならどうだ? ヴィヴィ強かったよな?」
再び眼前に吊るされた人参に、ヴィヴィは鼻息荒く「……っ やるっ」と即答したが、
「世の中 美味しい話には裏がある」とはよく言ったものである。
「ただし、条件がある」
「え? なあに……?」
「それに着替えて出てくること」
兄の寄越した妥協案に、金色の頭を掻き毟った妹はまた喚く。
「……っ それじゃ意味ないじゃんっ!」
このウサギコスプレで匠海の前に出たくないから籠城しているのに、このまま出て行ってジェンガをするなど有り得ない。
「ん~~そうかな? 一瞬恥ずかしい思いするだけだろう? もしヴィヴィが勝てたら、今度こそすぐに屋敷へ送ってあげるのに」
「……ほんとにぃ~~?」
扉一枚隔てていても、ヴィヴィが心底 疑っている様子は、全て匠海に筒抜けだったろうに。
「ああ、本当だよ。何ならジェンガする前に一筆書いたっていいよ」
「………………」
兄が寄越した更なる妥協案に、大きな瞳がすっと剣呑に細められる。
一筆書く……?
『自分がゲームで負けた場合、すぐさま妹を松濤の屋敷に送り届けます』って?
馬鹿馬鹿しい。
それより他に、匠海が自分に対して一筆したためて欲しい事があるのが、解らないとでもいうのだろうか。
『金輪際、妹の目の前に現れない』
『互いの過去の過ちを口外しない』
そして、
『以前手にした猥雑な物証が世に出回らぬ様に抹消する』
それらを心底切望しているヴィヴィにとっては、やはり今の兄とのやり取りは茶番以外の何物でも無かった。

