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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章

結局そのまま籠城することもままならず、仏頂面でバスルームから出るしかなかったヴィヴィ。
「こら、ちゃんとフード被れ。イースター・バニーちゃん」
乱れた金の頭にアイボリーのウサ耳が付いたフードを被せる兄は、心底愉しそうで。
「……~~っ このド変態っ」
(てか、ど腐れ外道めっ!!!!)
「あはは。じゃあ、ジェンガしような?」
白い歯を見せて破顔する兄をフードの下から睨み上げた妹は、とっとと元いたリビングへと戻りジェンガタワーを積み上げ始めた。
ジャンケンで順番を決め、各々 長方体のブロックを抜き取っては積み上げていく。
そんな単純なゲームにも関わらず、18段のタワーを睨み付けながら慎重に事を進めていくヴィヴィに対し、
「覚えてるよ。双子がウサ耳のカチューシャして、エッグ・ハントしていたの」
そんなどうでもよい昔話を囁いて寄越す匠海は、憎たらしいほどに余裕綽々だった。
もう後が無い妹は兄の言動を全て黙殺し、悲願の一勝を目指してゲームに取り組んでいたのだが。
目深に被らされたフードから垂れる長い耳を、撫でたり撮んだりしてちょっかいを掛けてくる兄に、
「触るな」
妹は一瞥もせず、そう言葉だけで制する。
「どうして?」
「気が散る」
「ふうん、集中力無いんだな」
「……――っ」
(んだどぉ、ごる゛らぁ~~っ)
一度は五輪トップを極めたトップアスリートに対し、あまりにも失礼千万たる物言いに、思わず心の声が口汚くなる。
だが、そこで集中力を途切らせたのがいけなかった。
他のゲームに比べて両者の実力は拮抗し、匠海の番でタワーが不気味にしなったにも関わらず、
その次のヴィヴィが「もう抜けるジェンガ、無い……っ」と焦りながら、何とか下から4番目のブロックを抜き取った途端、
無残にもタワーは傾ぎ。
崩れ落ちるタワーのけたたましい大音量と共に、ヴィヴィの一縷の望みも粉々に砕け散っていった。

