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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章

そして当然の成り行きとして、ヴィヴィも『マム、ヴィヴィも飼いたい!』とせがんだのだが、
猫アレルギーのジュリアンは、悪魔にでも遭遇したかの如き形相で『駄目に決まってるでしょ!!!』と一刀両断した。
父と上の兄にデロ甘に甘やかされてきたヴィヴィは、その場で地団駄を踏み、
『やだっ にゃんこ、おうちに連れて帰るのっ!!!』
静かに事の成り行きを見守るクリスの隣で、散々 駄々を捏ねまくり。
最終的にはギャン泣きした面倒臭い娘を担ぎ上げた母は、有無を言わさず迎えの車に押し込んでしまったのだ。
『なるほどね。ネコ飼えないから膨れてたのか』
あまりにも子供っぽい理由に苦笑する匠海の傍ら、投げ出していた両脚を短い腕で抱き込んだヴィヴィは、更に頬を膨らませる。
『マム……キライ……』
(だって、にゃんこダメっていうし……。今日も「一緒に海行く」って、約束してたのに……)
匠海の初等部も双子の幼稚舎も夏休みで、しかも祝日の今日。
どうしても夕方からしか都合のつかぬ父はともかく、母は朝から一緒に葉山の別荘に来る予定になっていた。
なのにジュリアンは「急用が入っちゃった、ゴメンっ!」と3兄妹に平謝りし、とっとと出掛けてしまったのだ。
細い両肩を竦めた匠海は、傍らで成り行きを見守る執事・五十嵐に苦笑して見せ、
視線を金の繭玉の様な妹へと戻す。
『ヴィヴィ。マムはね、ネコアレルギーなんだよ?』
『……知ってるもんっ』
『ネコがおうちにいたら、目が痒くなって、くしゃみが止まらなくなるんだよ?』
『3階だけで飼うんだもんっ!』
家族の中で一番懐いている匠海にも、ヴィヴィは珍しく唇を尖らせてごねる。
昨日見た、真っ白でふわふわの産まれて間もない赤ちゃん猫。
実際に匠海も目にしたら きっと「飼いたい」と言う筈だと、ヴィヴィは思い込んでいたのだ。

