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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章
リビングにマットを引き、念には念を入れてストレッチを行い、
キッチンに移動しては、ダイニングの椅子をバー代わりにバレエの基礎を確認していく。
プリエ、バットマン・タンデュ、ジュッテ、ロン・ド・ジャンブ・ア・テール――
昨日は朝しか身体を動かせず、更には寝てばかりだったからか、妙に全身の筋肉が強張っている感じがあった。
肩甲骨・背筋・股関節の状態に神経を尖らせつつ、かつ驚異の柔軟性を見せるヴィヴィは、
ピアノ演奏さえ無い無音状態でも、まるでそこには自分だけが聴こえる美しい旋律があって、
それに乗せる様にバレエのパを確認していった。
一旦キッチンへ引っ込み、ペットボトルのミネラルウォーターを調達し。
カウンターに腰を凭れかけ休憩を取りながらも、小さな顔は思案気に だだっ広い空間を見つめていた。
かと思うと、何故か大きなダイニングテーブルとイスを移動させ始めたヴィヴィ。
ダイニング、グランドピアノのスペース、そしてリビング。
それぞれの空いた空間をぶち抜いた広さに満足げに頷き、そそくさと次の準備を始める。
兄が目を覚ますであろう時間まで、まだ1時間以上もあり、
そして薄闇が広がる外は、未だ雨が降り続いていた。
右脚を前に踏み出してのポワント(爪先立ち)。
ゆったりと頭上へ掲げた両腕は、優雅に肩高へと降ろされる。
両腕を外へしっとりと送りながら、それぞれの指先を追い流れる視線。
右のトウで踏み出し、左脚は空中でクペ(軸足の足首)に添え、
軽く床をトンと叩き、パッセ(軸足の膝に持ち上げる)へ。
それを3回繰り返し、素早く5番ポジション(外側へ開いた両足を前後に交差)とシュ・スー(5番から両爪先で立つ)を重ねる。
腰前でクロスした両腕の可憐さといい、まるで、
小鳥がそこここを跳ねまわる様な、小気味良い足さばき。