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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章
4月14日(日)
葉山の別荘に拉致されて3日目、早朝5時ちょうど。
ぜんまい仕掛けの人形の様に、ぱちりと目蓋を持ち上げたヴィヴィは、
ベッドから のっそり上体を起こすと、両腕を持ち上げ「ん~~」と伸び上がった。
遮光カーテンの引かれた寝室は当たり前だが暗く。
ベッドサイドのランプを付けようと伸ばした白い腕は、しかしボタンをタップする前に空中で止まる。
「………………」
(また、この部屋で寝たんかい……)
こてこて関西弁で突っ込んだヴィヴィは、隣のシングルベッドで眠る男をうんざりと見やり。
だがそれも2日連続ともなれば、どうでも良さそうに己のベッドから降り、足音を殺しながら寝室を出た。
やや億劫そうに、寝乱れた金の頭をワシャワシャしながら階下へ降りれば、
その時になって初めて、外が雨模様という現状に気付く。
「ぅえ~~……」
不服そうな呻きを漏らしつつ、がらんとしたリビングを横断し。
レースのカーテンだけが引かれた窓辺に立てば、外は結構な本降りだった。
(あ~~あ……。今日もランニング、行きたかったのになぁ……)
指紋が付くのも構わず、大きなサッシにべったりと張り付いたヴィヴィは、
そのまま微動だにせず、雨に濡れて夜闇に輝くウッドデッキを眺めていた。
日中は白いクッション部分が置かれる黒の藤編みソファーにも、大きな雨粒が叩き付け。
草木も地面も そして空も、濡れていないところなど皆無だった。
寝起きのぬくい体温に、へばり付いたガラスのヒンヤリした質感が心地良く。
しかし、数分後。
ゆっくりとそこから離れたヴィヴィは、顔を洗う為にバスルームへと消えて行った。