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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章        

 脳の言語野がその言葉を読み解くまで、数秒を要した。



『お前が他の男を受け入れられる訳が無い』



 他の男を受け入れる――?

 確かに、自分は匠海以外の男を、この身で受け止めた事は無い。

 けれど。

 けれど、じゃあ、

 この身体が覚えている感覚は……?

 この両手が、

 ペーパーナイフを介して受け取った、

 “あの感触” は――?



「……ぃ……や……っ」
 
 全身の血液がザッと音を立て、足元へと下がっていく。

 過去の忌々しい記憶は不本意ながら、目の前の兄によって上書きされた筈だったのに。

 ソファーの背凭れに縋り付いたまま、ガタガタと尋常でない震えを見せる妹に、

 兄はようやく、己の犯した過ちを悟ったらしい。

 有無を言わさず抱きすくめられた身体。

 まるで寒さに凍える人間を必死に温めんとするかのように、大きな掌で撫で擦ってくる匠海は、

「今のは、酷かったな……」

「悪い。本当に、ごめんっ」

 そう何度も何度も、ヴィヴィに対して謝罪を繰り返していた。

「……ゃ……っ やぁ……っ!」

(いや……っ 怖いの、苦しいの……、もう、何も思い出したくない……っ!!)

 細くしゃがれた声で否定を続ける、血の気を失った唇。

 それを暖かな自分のそれで吸い上げた兄は、

「ああ。俺だって嫌だ!

 もう絶対、俺以外の男にお前を触れさせるか……っ」

 そう苦しそうに吐き出し。

 華奢な身体の震えが収まり、生気を取り戻すまで、

 何度も何度も角度を変え、妹の口内を蹂躙し続けた。






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