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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章    

ルル『さあ、便箋よ』

博士『書く力なんて、ないよ……』

ルル『書かなきゃダメ!』

博士『できない……』

ルル『「親愛なる、貴女様――」』

 シェーン博士がルルに言われるがまま、便箋に綴り始める。

博士『……俺の、死刑 “宣告” が出た……っ』

ルル『「どうか、これまでのお約束をお取り下げください」「私の良心は……」』

 シェーン博士が筆を動かさず、哀願の眼差しをルルに向ける。

ルル『書きなさい。
 「私の良心は……・私の怖ろしい運命に、
 貴女を縛り付けることを、私に許さないのです」』

博士『その通りだ……。確かに、そうだ』

ルル『「貴女には言わねばなりません。私は、貴女の愛には――」』

 シェーン博士が、ルルを振り返る。

ルル『書きなさいよ。
 「私は、貴女の愛には値しない男なのです。
 この文面が、何よりの証拠です……。
 3年間、私は身を離そうともがき続けてきました……
 ですが、そう出来る力はありませんでした。
 今これを書いているのも 
 “私を支配するその婦人の傍” なのです。
 もう私のことは忘れて下さい――!
 ドクター・ルートヴィッヒ・シェーン」』
 
 別れの手紙を書き終えたシェーン博士が、激しくしゃくり上げる。

博士『おお、おおっ! 神よ……っ!』

ルル『「神よ!」……じゃないってば!「追伸――」』

博士『 追伸……?』

ルル『「私を救おうなどとは、ゆめゆめ思いませぬよう――」』

 シェーン博士は最後まで書き終わると、力尽き、自分の中に閉じ籠ってしまう。

博士『もう……後は、死刑 “執行” だけか……』


 こうして、どうしても抗えないルルの魅力に負け、シェーン博士は婚約解消を告げる手紙を口述筆記させられる。 

 念願叶いシェーン博士の妻になったルルだったが、その魔性は消えず。

 以前と変わらず、(同性愛者)ゲシュヴィッツ伯爵令嬢をはじめ、老若男女を受け入れていた。
 
 兄妹として育った筈のアルヴァも、ルルに骨抜きで。

 妻の奔放な性関係に、シェーン博士はついに ルルに拳銃自殺を強要するが、

 「私のために人が死のうと、私の価値は下がらない」と、ルルはシェーン博士を打ち殺し、警察に逮捕され投獄される。

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