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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章
匠海が目を覚ましたのは、それから2時間後のことだった。
隣の寝室に移動し、1時間ほど ぐったりしていたヴィヴィだったが、
さすがに腹が減ってどうしようもなく、バスローブを着込むと へろへろの足取りへ階下に降りた。
キッチンでパンを見つけレタスとトマトを挟み、1人で もそもそ遅いランチを摂っていたところに、
バスローブを引っ掛けただけの兄が、慌てて階段を駆け下りて来た。
「……っ ああ、びっくりした……」
気の抜けた兄の第一声に、妹は白けた瞳を向けながら ひたすら即席サンドを頬張る。
「起きたらいないなんて、心臓が止まるかと思ったぞ!」
「………………」
勝手に寝入ってしまったくせに、若干怒っているようにも見える匠海を前に、
ヴィヴィは大口を開けて最後の一口を押し込んだ。
正直、全然美味しくなかった。
せめてバターを塗るなり、マヨネーズを塗るなりすれば良かったのに。
野菜の味しかせぬそれは塩気ゼロで、味気無いものだった。
それでも取りあえず空腹は満たされたヴィヴィは、両手についたパン屑をパンパンとはたく。
いろいろ落ち着き冷静になった頭は、
『どうして兄が、今頃になって自分に干渉し始めたか――?』
その理由を ようやく理解することが出来た。
それは「ヴィヴィが日本に帰国したタイミングだった」というのもあるが「それだけ」ではなかったのだ。
「ああ、なんだ、そっか……」
キッチンカウンターに落ちたパン屑を、シンクの方へ手で払い落とすヴィヴィに、
前後の繋がりの見えぬ匠海が「ん?」と首を傾げる。
「なるほどね。お姉さん、妊娠中だもんね」
「え?」
「出来ないんでしょう、セックス」
「………………」
図星だったのだろう。
押し黙った兄の目の前、足の長いカウンターチェアからぴょんと降りたヴィヴィ。
「何月に生まれるんだっけ?」
「7月、だが……」
訝りながら答える兄に歩み寄った妹は、20cm上にある “己の大切な男” を見上げる。
「そ。じゃあ、それまでね」
「何が?」
「 “妹の私で性欲解消するのが”――よ」