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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章
実際にこの曲も、下記の変奏がなされている。
序奏
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第1変奏:主題を “ハ長調” にもとづいてアレンジ
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第2変奏:“2つの異なる調性” の主題が同時進行するアレンジ
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第3変奏:<<葬送>> “無調様式” でアレンジ
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第4変奏:“12音技法” によるアレンジ
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“主題”提示:F・ヴェデキント 作曲
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コーダ(終結部)
通常 “主題” が先に提示される事が多いが、この曲は形式に捕らわれていない。
それに加え、『LULU』には他にも、幾つもの特徴があった。
大概の人間が初めてこの曲を耳にすると、首を捻り、眉間に皺を寄せ、戸惑った表情を浮かべる。
耳に馴染まない、未知の旋律が続く『LULU』は、難解で取っ付きにくい。
高い金を払ってオペラの劇場に足を運んだとしても、
オペラ自体の退廃的な内容と、独創的過ぎる曲調に頭が痛くなり、途中退席して帰ってしまう客もいるほどに。
その理由として挙げられるのが、前掲の “無調様式” や “12音技法” にある。
多くの人が、第1変奏の “ハ長調” は、目や耳にしたことがある筈。
“ハ長調” の様に “調のある” 主題が、第2、第3変奏……と進むに従い、
調の無い “無調様式” にアレンジされ、“12音技法(下記参照)” へと変貌を遂げて行く。
ベートーベンらが多用した伝統的な “調のある” 世界から、“無調” という縛りの無い世界への移行。
言わば “形あるものを壊してゆく”――。
そんな風に捉えられるこの『LULU』に、ヴィヴィは妙に惹かれていた。
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※12音技法
1オクターヴの12の音全てを、ある一定の順番で使用していく作曲法。
12音全てを平均的に使用する事で “ハ長調” の様に、特定の調性に縛られる事から逃れようとしたもの。