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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章
「ヴィクトリア……」
「なあに?」
「ごめん、今日は寝よう」
「へ……どうして? 私するき満々よ?」
「する気満々」等と、淑女なら口にすべきでない返事をしながら腰を浮かせた妹は、
情けなく しな垂れた陰茎を両手で包もうとしたが、兄は片手でそれを押し留めてしまった。
「悪い。俺が疲れてる」
「……あ、そ……」
興を削がれた様子で跨いでいた身体から退き、ベッドからも降りようとしたヴィヴィを、
細い手首を掴んだ匠海が制止する。
「一緒に寝よう」
「嫌よ」
にべもなく却下した妹は、兄を振り返ることすらしなかった。
1人で寝たほうが心が休まるし、身体の疲れも取れるのに。
セックスという共通の目的を失った今、添い寝の必要性はどこにも見当たらなかった。
なのに、
「頼む……。少しでも良いから、傍にいて欲しい」
一言一言 噛み締めながら発された懇願に。
思わず振り返った先、目が合ってしまった慈悲を乞う眼差し。
己を守らんと無意識に纏っていた、トゲトゲの鎧が肩から滑り落ちたかの如く、
匠海のどこか情けない一連の言動に、性懲りもなく絆されてしまう自分がいた。
「…………、しょうがないな」
不承不承といったていで、再びベッドに腰を下ろしてしまう。
「ありがとう……」
少し端に詰めた兄がそう呟きながら、凭れ掛けていた上半身もベッドの中へと収め。
その枕元に片肘を付き横になったヴィヴィは、成り行きで目の前の黒髪をゆっくりと撫で始めた。
兄が幼い自分にそうしてくれたのと同じように。
時折 艶やかな黒髪に指先を入れ、梳いてやると安心するのか。
ようやく ほっとした表情で目蓋を閉じた匠海。
言葉通り本当に疲れていたらしく、
しばらくし、広い寝室には穏やかな寝息が聞こえ始めた。