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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章        



『ふぅん……。私はお兄ちゃんの全てが信じられないのにね?』

『中に出せないから? 私以外はピル飲んでないの? でもさ、お金払えば飲んでくれるんじゃない?』

『じゃあ、どうして中に出したの? 飲んでないよ、私』

『ふふ、どうしよう。デキちゃったら』

『お姉さんとエッチ出来なくて溜まってるんでしょ?』

『私、協力してあげるよ。お姉さんと一緒にセックスしてあげる』

『だってお兄ちゃん “私にしか勃たない” んでしょう?』



 怒りをぶつけること

 非難すること

 蔑むこと


 2度の別れを経験しても

 匠海本人に対して出来なかったそれら

 でも 

 いざ言葉にしてみても

 行動に起こしてみても

 自分の心は晴れるなんて事は無く

 それどころか――


 己の言動で憔悴していく兄を目にするのが辛くて

 そして

 何も生み出さぬ負の感情に捕われた自分も

 闇に足を取られ

 深淵に呑み込まれ

 その結果 待ち受けているであろう未来は きっと

 己で退路を断たんと 

 自滅の一途を辿る日々――



 ベッドサイドのランプに照らされた彫りの深い男の顔。

 その陰影に余計 疲労を感じ取ったヴィヴィが、思わず胸にその頭を抱え込む。

 どう見ても熟睡しているのに。

 布越しの乳房に すりすりと高い鼻を擦り付けてくる、甘えた仕草。

 母性や庇護欲に近い、けれど言葉では説明出来ぬ ぼんやりと正体の見えぬ何かが、

 薄い胸を じくじくと苛んでいた。



 私が持て余しているこの感情が

 まだ愛情だというのならば

 自分の愛とは “与えること” なのかもしれない


 見返りを求めず

 乞われるままに ただ与え続ける

 別に奉仕の精神なんて高尚なもの、持ち合わせていないし

 兄を憐れんでいる訳でも無い

 もはや そうする事以外

 今の自分を保てる術が見当たらないだけ


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