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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章        

「びび~~っ」

 エッジカバーを外し滑り寄ってくる叔母に、向けられる瞳と笑顔はあまりにも純粋すぎて。

「……匠斗、ほら、くるくる~~」

 氷の上でハイハイしていた甥をひょいと抱き上げたヴィヴィは、ゆっくりとその場でスピンしてみせる。

 ジュリアンやクリスにもされた事があるのだろう。

 驚く事も無く喜ぶ甥っこを胸にダッコし直し、今度は移動しながらツイズルを回ってみれば、

 それは初体験だったらしい匠斗は、一瞬きょとんとしながらも すぐに愛らしい笑顔を弾けさせる。



 物凄く大切なのに 

 どれだけ望んでも 自分には得られぬ存在

 それは兄である匠海にも

 甥である匠斗にも通じること


 心の底から慈しみたいのに 

 幼い顔の向こうに透けて見える この子の両親を

 自分はどうしても受け入れられない



「びび~~」

 叔母の腕の中で安心しきったその表情は、危険な氷の上でも変わる事は無い。

 向けられる無垢な愛情に縋り付く様に、幼子の暖かな身体をより一層深く抱き締めた。



『私は “与えること” を惜しんではならない』



 その己の決意を以てしても

 取り巻く現実は非情で

 脆弱な自分は すぐに悲鳴を上げては立ち竦む


 心の奥底の自分は

 途轍もなく臆病で

 出来る事ならば この温もりさえも投げ出して

 一刻も早く苦しみの無い本拠地――英国へと消え去りたいと願っている



 本当は違う

 本当の私は


 何も聞きたくないし

 何も知りたくない


 何も考えたくないし

 何も感じたくない


 もう

 もう

 何も見たくないの――




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