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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章        


『自分でも、言動に “矛盾” を感じてるってこと?』


 宮田のその追及は、驚くほどすとんとヴィヴィの中に落ちてきた。



 今の自分は天の采配か

 ただの無慈悲な現実か

 正に直面しているのだ

 この曲を選んだ時には想像をもしていなかった

 今の自分自身に対する “矛盾” を――



「今の自分と向き合うには、あの曲でしか無理なんです」

 再び己の気持ちを言葉にしたヴィヴィに、目の前に座した宮田からは深い深い溜息が零れ落ちた。

「まいったな……。確かにね。俺も、あの曲以外にハマるものが見当たらなくなってるんだ」

「……え……?」

 てっきりまた頭ごなしに「駄目だ」と言われると思っていたのに。

 豊かな黒髪を掻き上げた振付師は、途方に暮れた表情を浮かべつつ続ける。

「ヴィヴィにしか出来ない演技、誰も及ばない独自の世界観――。それが確かに、目の前にある……」

「先生……」

 己の気持ちが通じた。

 そしてそれを確かなものとして認めてもくれている。

 感謝と安堵で一杯になり、それを「ありがとうございます」という言葉で表そうとしたが。

 しかしそれは、念を押すように続けられた言葉に、瞬く間に咽喉の奥に引っ込んだ。

「なあ、俺は信じていいのかな? 

 この曲を今シーズン滑って、ヴィヴィがきちんと “自分の矛盾” と向き合えるって」

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