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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章
『Men grow cold as girls grow old
―女が老いると男共は いずれ冷たくなるわ
And we all lose our charms in the end
―そして私たちは皆、色香を失ってしまうの
But square cut or pear shaped
―でもスクエアカットやペアシェイプに削られた
These rocks don't lose their shape
―宝石はその姿が衰えることはないの
Diamonds are a girl's best friend
―ダイヤモンドが女子の最高の友なのよ』
手にしていた模造ダイヤをデスクに転がせば、また束の間の輝きを取り戻すガラス。
リビングを通り過ぎ、廊下へ出たヴィヴィは ずんずんと迷い無い足取りで先を進む。
金色の頭の中で奏でられるのは、アメリカのセックス・シンボルの有名曲。
そして、小気味よく響くビックバンドの間奏。
『Tiffany's
―ティファニー』
『Cartier
―カルティエ』
脳内で現在のエキシビの振付を再現すれば、やけっぱちなのか元来のお調子者の血が騒ぐのか。
軽やかにステップを踏み始めた、ローヒールの爪先。
「Black Star
―ブラック・スター
Ross Gorem
―ロス・ゴーレム」
最初は小さかった歌声が、やがて廊下に響く程のものになり。
辿り着いた階段の手すりを掴んだヴィヴィ。
「Talk to me, Harry Winston
―ハリー・ウィンストンの事を話して
Tell me all about it
―全て私に教えてちょうだい!」
気持ち良さそうにサビを歌い上げ、勢いのまま手すりに乗って滑り降りようとした、その途端。
「おっ お嬢様っ!! なんてこと……!!」
階下から上って来ていたらしい家令に、運悪く見咎められてしまった。