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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章        


 遠くに聞こえる警笛。

 貨物列車のゆったりとした徐行音が、これからの全てを形作るリズムへと変化を遂げる中。

 ハーフアップでルーズに結い上げた金の頭は、スポットライトにその全容を照らし出されても、

 項垂れたまま、ただただ氷の上に立ち尽くすのみ。


「I've seen it all
 I have seen the trees
 ―私はもう見たのよ 
  緑の木々も見た

 I have seen the willow leaves
 Dancing in the breeze
 ―私は見たのよ 
  ヤナギの葉が そよ風に踊るのも」


 ようやく滑り始めたスケート靴。

 それは足元から伸びる幾つもの影をなぞる様に、片方のブレードだけで図形を描き。

 やがて推進力を得て滑走を始める。


「I've seen a man killed
 By his best friend
 ―私は見たのよ
  男が親友に殺されるのも

 And lives that were over
 Before they were spent
 ―命を全うする前に 
  人が死んでゆくのも」


 助走の中、両手首を下向きに交差させ。

 頭上へ持ち上げ頭をくぐらせたのち、肩から胸へとずり下がっていく両の掌。

 そして左アウトエッジから飛び上がった、3回転ルッツ。


「I've seen what I was
 And I know what I'll be
 ―過去の自分も見たし 
  未来の自分も分かってる

 I've seen it all
 There is no more to see
 ―何もかも見た今 
  もう見るものは何も無い」


 着氷のスピードのまま両手で軸足を掴み、

 軸足とフリーレッグで、氷面と垂直な線を描いたシャーロットスパイラル。

 微かな車輪音に小鳥のさえずり。

 足首を掴んでいた両手が すねから膝、膝から太ももへと這い上がって行く。

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