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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章
『You haven't seen elephants,
Kings or Peru
―君はまだ見てないよ
象も王様もペルーも』
こんな自分でも、好意を寄せてくれる男性の声。
「I'm happy to say
I had better to do
―私は幸せなことに
他にすべき事があるの」
ぴたりと氷上に静止したヴィヴィは、男の囁きを跳ね除けるかの如く、
顔前で合わせた両肘から上を、2度3度と衝突振り子の様にかざすのみ。
『What about China?
Have you seen the Great Wall?
―中国はどうだ?
万里の長城の壁は見たか?』
「All walls are great
If the roof doesn't fall.
―どの壁もすごいわ
天井さえ落ちてこなければ」
『And the man you will marry.
The home you will share
―君の夫になる男は?
彼と築きあう家庭は?』
「To be honest,
I really don't care
―正直言って、
そんなもの 興味が無いのよ」
助走から飛び上がった3回転サルコウ+3回転ループ。
線路を踏みしめる音に重なる、哀しみを湛えたオーケストレーション。
「もう何も聞きたくない」とばかりに片耳を押さえた右手。
しかしそれも諦めを滲ませた視線と共に降ろされていき、助走へと入っていく。
『You've never been to Niagara Falls
―ナイアガラの滝も まだ見てないよ』
「I have seen water.
It's water, that's all
―でも水を見た
滝なんてただの水、それだけよ」
前向きの助走から踏み切る直前、ぱっと後向きになり跳ぶ3回転フリップ。
氷屑も上げぬ静かな着氷の中、痛みを堪える様に白のベアトップの胸前で握り締められた両手。