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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第15章
「え……? ちょ、ちょっと待って。えっと、私、今日大学あるんだけど?」
ダリルに「開けて~❤」と強請られたクリスが、クロスを被せたコルクを爽快な抜栓音と共に開栓する様子に、
焦りだしたヴィヴィが目を白黒させる。
2人は――まあ良い。
例え平日から朝シャンと洒落込もうが、大学院生の彼らは個人の裁量下に於いて時間の融通は幾らでも利くのだから。
しかし、一介の学部生のヴィヴィは違う。
決められた時間に講義を受け、締め切りまでに提出せねばならぬものも沢山――
そこまで思ったヴィヴィは、シャンパングラスを交わす2人の間で はたと我に返る。
「ああっ!! 今日、エッセイ締切日なんだけど!」
連日 眠いまなこを擦りこすり必死に書き上げたそれの提出期限が、今日の夕方に迫っていた。
最悪それまでにこの2人の言う “大変なこと” から解放されなければ、今度はヴィヴィが “大変なこと” になるではないか。
「あ~、あれでショ? 部屋のデスクに置いてあったペーパー?」
「え……? あ、ブルーのクリアファイルに入ってるやつ?」
「そうそう。あれだったら、さっきクリスが助教に提出してたから大丈夫~~、無問題(モウマンタイ)~~」
「………………???」
謎の広東語で話題を切り上げたダリルに、金色の頭の中は更に「?」に溢れ返ったが、
そんなヴィヴィを間に挟んだ2人が酒盛りを始めてしまえば、当惑を浮かべていた小さな顔は徐々に達観を色濃くし。
クッションのきいた革のシートに、脱力して凭れ掛かるのだった。
2人に拉致(?)されてから1時間後。
たかだか22歳の3人で出掛けるには無駄に豪奢なホワイトリムジンは、馴染みのある場所へと滑り込んだ。
と同時に待ち構えていた正装のスタッフによって、トランクから あれよあれよという間に5つのスーツケースが下され、
有無を言わさず施設内に運び込まれていくではないか。