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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第15章
「……ヴィヴィ、ちょっと “大変なこと” になった……」
いつもの無表情でそう発した双子の兄は、有無を言わさず妹の手首を掴み席から立たせ。
「は……? たっ “大変なこと”って、なに??」
灰色の瞳を瞬かせながら驚く妹を、兄は衆目を浴びる中 有無を言わさず引っ張っていく。
(えぇ!? な、何事……? あ、私、本 片付けてないのに)
出口へと連れ去られながらも、デスクの上に山積みにしたままの書籍をちらりと振り返れば、
何故か気合のはいった女装姿のダリルが、それらを返却カウンターへ いそいそ運んでいる姿が目に入った。
解けそうなストールを手で押さえつつ、堅牢な石造りのライブラリーを後にすれば、
表通りから一本奥に入ったクィーンズレーンに、白塗りのリムジンが停車していた。
押し込められるように乗せられ訳も解からず呆けている隙に、3人を乗せた車は有無を言わさず発車した。
「よし、時間通り!」
右隣に腰掛けたダリルが、腕時計で確認しながら満足そうに頷けば、
「運転手さん、宜しくお願いします……」
左隣のクリスは数分前までの深刻そうな様子も無く、静かにドライバーに挨拶する。
そして2人の間に鎮座させられたヴィヴィはというと、結構なスピードで飛ばし始めた だだっ広いリムジンの中、1人首を傾げていた。
「ねえ、どこへ向かってるの?」
そうクリスに問うも「まあ、着けば、判るから……」と、彼にしては要領を得ない返事が返ってくるし。
「 “大変なこと” って? 誰かに何かあったの?」
続けてダリルに問うも、返ってきたのはまさかの反応。
「まあまあ、そんな深刻な事じゃないから心配しないデ。あ! シャンパンあるじゃない、乾杯しようヨ~~❤」
頭上にはシャンデリアが輝く車内にシャンパングラスを見つけた同居人は、平日の朝っぱらから呑気に付属の冷蔵庫を漁りだす始末。