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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章
「え? そうですね……。最初は1人でいいかなと思っていたんですが、一度 “産む幸せ” を味わってしまうと、もう1人、もう1人って、欲が出ますよね?」
そう語る瞳子の声は、本当に幸せそうなもので。
「そうだよなあ。それに匠斗にも兄弟がいたほうがいいだろう?」
「両親が共働きの1人っ子は、淋しいだろうねえ」
「じゃあ、次は女の子がいいかしらね?」
叔父や叔母の声に、
「ええ。匠斗を生んで、男の子もいいなとは思ったのですが、2人目は可愛らしい女の子がいいですね。ふふ、匠海さんにおねだりしてみようかしら?」
義姉の少し甘さを滲ませた声音が、鼓膜を震わせた途端、
ヴィヴィは弾かれた様に、その場を後にして元来た道を足早に戻り始めた。
両拳をきつく握り締めていないと、緩んだ途端に叫んでしまいそうで。
まるで全ての事から逃げる様に階上へと上がったヴィヴィは、自分にあてがわれた客室へと飛び込むと、一目散にクローゼットへと向かった。
この屋敷の使用人が整えてくれている衣類を、無造作にスーツケースの中に押し込める。
バスルームに行き基礎化粧品も掻き集め、スケートの荷物も片し。
その時になってスマホを手にしたヴィヴィは、タクシー会社に配車の手配を依頼した。
後5分程で近くにいる車を回せるとの返事に、ヴィヴィは忘れ物のチェックを怠らず、静かに客室を後にした。
さすがに階下に降りた所では、この屋敷の執事に見つかりはしたが、
「急用が出来たので申し訳ないが失礼します。祖父母には「また近いうちに遊びに来る」と伝えて下さい」
その旨を伝言し。
ちょうど到着したタクシーに乗り込んだヴィヴィは、文字通り逃げる様にワイアット邸を後にした。
運転手に行き先を、ここから50分ほどのエディンバラ空港へと指示し、
スマホでクレジットカード会社に電話し、今から搭乗出来る ロンドン行きの国内線を手配して貰う。
もう、ヴィヴィは何も知らない、何も出来ない子供じゃない。
メトロ(地下鉄)だってバスだって1人で乗れるし、飛行機やホテルの手配なんかも当たり前に出来る。
そして、自分の行動も自分で責任を負える年齢へとなっていた。