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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第16章
珍しく「分かった」と素直に返事したヴィヴィだったが、なぜかその場から離れることは無く。
それどころか紺のパンツを纏った兄の上、ひらりと横座りしてしまう。
「ヴィヴィ、あのね……」
「 “座って” “待ってる” 」
言われた通りにしただけだと言わんばかりの返しに、匠海はまた鼻で笑う。
「PC開いたらキーボード占領しにくる猫みたいだな」
もろもろ諦めた様子で仕事を再開する兄の太ももの上、妹はと言えば首筋に絡めた腕はそのままに、ずっと下から見上げていた。
剃り残しなどありえない綺麗に当られた顎、整いすぎていて逆に冷たい印象すら与える輪郭。
けれど密着した半身は、薄いシャツ越しに熱いほどの体温を伝えてくる。
もっと感じたく化粧気の無い頬を肩口に押し当てれば、仕事に没頭していた筈の匠海から不意打ちの口付けが降ってきた。
数度 薄い唇を気まぐれに食まれ、小さな顔に宿るのは好奇心。
なんだかセフレっぽくていい。
「こっちの手、お休み?」
「うん?」
書類に添えられていない左手をひょいと持ち上げたヴィヴィは、その手の甲に鼻を寄せ何故かそこまでくんくんする。
薄い皮膚に力強く浮き出た血管を唇で啄ばみ、かと思えば掌の中に己の頬を寄せてみたり。
面白い暇つぶしを見つけたとばかりに兄の左手を弄んでいた妹だったが、それも数分続けると飽きてしまった。
整然と設えられた空間に、やけに規則正しく聞こえる書類をめくる音。
薄紅色の唇がつまらなさそうにツンと尖り始めたと思った次の瞬間、ヴィヴィは手にしていた大きな掌を己の小さなふくらみの上に押し当てていた。
情事の際は何度も目にした光景だけれど、改めて昼日中に見直すと、兄の大きなそれに対し自分の薄っぺらな乳房がなお貧弱に見えて。
「ぺちゃぱい」
静かな部屋に突如降りたあまりにも自虐的なその発言に、平静を装っていた匠海がとうとう吹き出した。
「~~っ!? もう、どんだけ可愛いんだ、ヴィクトリアっ」
力なく添えられていただけの左の掌がやっと明確な意思を持ち触れ合っていた乳房を鷲掴み、仕返しと言わんばかりに細い首筋に顔を埋め、そこで音が聞こえそうなほど深く匂いをかがれた。
「ん。硬くなった」
互いの服越しでも如実に感じた、尻を押し上げてくる熱いもの。