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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第17章                         

3月23日まで行われていた世界選手権。

翌日には開催地の中国から日本入りした双子は、その週に行われたアイスショー STARS ON ICE 2025 札幌&金沢に出演するという、ちょっと過酷なスケジュールだった。

それでも全国各地で双子の滑りを心待ちにしてくれていたのがひしひしと伝わってきたので、ヴィヴィは笑顔とガッツで乗り越えることが出来た。

ようやく地元である東京に戻れたのも束の間――4月2日(水)からは、今シーズンの最終戦となる国別対抗戦がここ、埼玉スーパーアリーナの地で開催された。

日本を始めとする、ロシア、アメリカ、フランス、イタリア、カナダの六ヶ国で行われるそれは、

ペア1組、アイス・ダンス1組、男子シングル2名、女子シングル2名 がそれぞれ獲得したポイント数の合計で順位を決める。

男子シングルはクリスと島田 高四郎の22歳コンビが大健闘し、

ペアは成田・下城組がベストスコアを叩き出し、

アイス・ダンスは脂の乗り切った渋谷兄妹が、SD1位の快挙。

よって本日の、ペアFSと女子シングルFSにより、いよいよ目前に見えてきた団体1位の勝敗が決まる。

「マイマイはもうリンク行ったの?」

オフィシャルホテルで同室のマリア 渋谷の問いに、自分も準備万端のヴィヴィは頷く。

「うん、ペアの直前練習は10時からだから」

「で、女子のプラクティスは11時からか~~」

12時からアイス・ダンスのエキシビ練習があるマリアは、同じバスで会場入りするらしく。

ロビーフロアのエレベーターから降りた二人は、それぞれ引いているキャスターバッグをコロコロ鳴らしながらロビーに向かう。

「リンカ、まだみたいね?」

女子シングルのもう一人、渡辺 凛果(16)の姿が見えず きょろきょろした二人は、手近なソファーに腰を下ろそうとした、その時。

目の前のレストラン――朝食会場であるそこから出て来た長身の男に、灰色の瞳が真ん丸に見開いた。

「ああ、ヴィヴィ。おはよう」

「…………っ お兄ちゃん、どうして?」

片手をパンツのポケットに入れた匠海が、こちらに気づいて声を掛けてくる。

「うん? ああ、昨日のクリスのFS観に来たついでに、ここに泊ったんだ。今日ヴィヴィのFS観たら帰るよ」

「……そう」

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