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どこまでも玩具
第11章 立たされた境地
 先日篠田が唐突に言った。
 「受験にばっか目がいく時期だがな、数えてみるともう登校日数は三十日ちょっとしかないんだぞ」
 意外だった。
 それで、思ったのだ。
 類沢とも、それでお別れかって。
 早すぎて、嘘みたいで。
 類沢がいない頃がもう思い出せなかった。
 なんでだろう。
 いつから、この人の存在が大きくなったんだろうか。
 考えるまでもないことだが。
 だから、少しでも一緒にいる時間をとりたかった。
 篠田の言うとおり、もうすぐ会えなくなるなら、悔いのないよう。
 悔い。
 俺は何を後悔するんだろう。
 ハンドルを握る類沢を盗み見る。
 何を後悔するんだろう。

 キキッ。
 音を立てて車が止まる。
 ぼうっとしていた。
 目を向けると、類沢の家だった。
 理由を尋ねようとした時、類沢が車を降りた。
 何かに魅入られたように。
 俺も後を追う。
 家の前に、誰かが立っている。
 じっと家を見上げていた顔が、こちらを向いた。
 男だ。
 知らない。
 でも、なんか見たことある。
 そうだ。
 前に類沢が見せたヴィジュアル系バンドの瑠衣に目が似ているんだ。
 昔、金原が似ていると言ってきたことがあった。
 だが、目の前の男は、ずっとそれに近かった。
 「雅樹……」
 「覚えていたんだ。雅先生」
 知り合い?
 類沢が真剣な顔になっている。
 いつもの穏やかさはない。
 「学校に行ったんだけど、外部の人は入れないって言われてさ。先生が家を替えてなくて良かったよ」
 誰だ。
 声は若い。
 街灯に照らされた顔は、同年代に見える。
 なのに、妙な堂々さがそれを錯覚させたのだ。
 「ま、それを確認できただけでいいや。今日は帰るよ、雅先生?」
 「何が目的かな」
 「目的? そんなの関係ないじゃん。いずれわかるしさ」
 雅樹と呼ばれた男は薄く笑って、去っていった。
 追いかけるかと思った類沢は、ただ黙ってその影を見つめていた。

 カチカチ。
 秒針が走っている。
 無言のまま、何秒も。
 類沢の家に入って、リビングのソファーに腰掛けて。
 それから止まったまま。
 類沢は、呆然としているようにも、何か考えているようにも見えた。
 あの男は誰ですか。
 なにかあったんですか。
 訊きたい。
 類沢先生。
 あれは、誰ですか。
 なんで名前で呼ぶんですか。
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