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どこまでも玩具
第11章 立たされた境地
夢を見た。
暗い、真っ暗闇。
何も見えない。
河南はいない。
それだけはわかる。
誰かが見ている。
背後から。
ざわざわと。
血が騒ぐ。
首筋を舐めるような黒い闇。
なんだ。
何がいるんだ。
俺は足を引きながら、振り返った。
「あんたにそこは似合わないよ」
笑顔の西雅樹が言い放つ。
その手には、拳銃。
よく映画とかに出て来るような。
黒い、拳銃。
「雅先生?」
何かが弾ける音が木霊する。
衝撃が胸を貫く。
でも、撃たれてはいない。
ドサリ。
後ろで、人が倒れた。
「類沢……先生…?」
振り向けない。
振り向いちゃいけない。
雅樹が笑う。
楽しそうに。
気怠そうに。
引き金を引きながら。
笑う。
拳を握る。
殴らなきゃ。
コイツは危険だ。
殴らなきゃ。
止めなきゃ。
「先生は殺させないっ」
ガクンと、机に突っ伏す。
「どうした、瑞希。グロッキーなのか」
「グロッキーって意味知ってて言ってんのか金原……」
今朝見た夢が脳裏にこびりついて離れない。
最近ナイフばっか見ていたからか。
拳銃まで出て来るとは。
それはいい。
最後のセリフはなんだ。
「いや、疲れてんのかなって」
「まぁそりゃ疲れちゃいるけど」
なんであんなこと叫んだんだ。
俺、やっぱりおかしいよ。
頭おかしい。
夢まで狂ってきたのか。
大体、あの雅樹って男がなんで出て来るんだよ。
嫌な空気。
まだ声も交わしてないのに。
「みぃずきっ! 見てコレ」
「誰……?」
携帯の画面を突きつけられる。
まだ幼い髪を結んだ少女。
クリクリした目で見つめ返す。
「おれの妹だって」
「えっ! あの櫻って子か」
俺の前に金原が携帯を奪い取る。
「母さんの家に行ったんだ。てか、鏡子さんが協力して待ち伏せてた。可愛いよな?」
「可愛い……」
「圭吾、目が本気ー」
「うわぁ。そうか。良かったな、アカ。向こうの人とは会ったのか?」
「ん? ああ、義父さん? 会ったよ。凄いダンディーなパパって感じだった。スノボの大会優勝暦ある中々タフな人だった」
チャイムが鳴る。
「教われば?」
「うん。今度来いって」
講堂に向かう。
「そしたらアカに教われるもんな」
「な!」
「それ目当て?」