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どこまでも玩具
第11章 立たされた境地
「鏡子さん、なんか言ってたか?」
そういえば、巻き込んで置いて何の説明もしていない。
階段を降りながらアカは頷いた。
「一応落ち着いたってことは伝えたからさ。もう二度とおれがいることをバラさないって泣いて誓って来たからびびったけど」
金原が苦笑いする。
あぁ、あれか。
俺たちのせいだ。
「たまに来るって。鏡子さんと仲良くなったみたいでさ。櫻も懐いてるらしいから、冬休みはよく会えるかも」
「へぇ」
講堂に入ると、話し声に包まれている気分がした。
そうか。
類沢が転任してきて、挨拶したときぶりか。
「類沢が来た時以来だな」
金原が読み取ったように呟いた。
壁際に、教員が並んでいる。
類沢を見つける。
一番後ろで、白衣で。
物静かに。
今朝と変わらない。
落ち着いた姿。
「みぃずき、止まんないの」
「あっ、わり」
「先に座れって」
金原が待っている。
すぐにブザーが鳴った。
終業式は同じように終わる。
挨拶と校歌。
休みの過ごし方。
そんなもんだ。
「明日から冬休みだぜ?」
「金原なんか予定あんの」
「瑞希……こういう時は誘ってくれよっ!」
軽くたたかれる。
誘えって……
「だって受験だろ!」
「みぃずき、つまんないこと言うね。つまんなさすぎ」
「そうだよな、アカ。ほらアカはわかってる。良いんだよ。三日位は遊びに行こうぜ」
「ほう」
びくぅっと金原が縮こまった。
横から現れた大きな影。
「三日位は遊びに……か」
「き、如月先生……」
女子から熱い視線が飛ぶ。
対照的に青ざめる金原。
それはそうだ。
つい、さっき喝を入れた三年の学年主任。
如月紫苑先生。
通称、帝王。
もう、あだ名とかの域じゃない。
いつでも真っ黒の背広姿。
短髪に細い眉。
一見、裏業界の人種に思われる。
「別に否定はしない。だが、忘れるなよ」
金原の頭を掴むと、低い声でゆっくり囁いた。
「遊ぶ馬鹿は見捨てるからな」
カツカツ。
遠ざかる背広に金原がうなだれる。
「帝王来るなら言えよう」
「気配無かったから」
腐っても受験生。
そうだ。
第一問題は進路だ。
西雅樹なんて気にしていられるか。
「やぁ」
校門で立つ人物に力が抜ける。
「話がしたいんだけど」
「雅樹さん……」