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どこまでも玩具
第11章 立たされた境地

 ガタン。
 「コーヒーで良かった?」
 「はぁ、どうも」
 自販機から缶を取り、渡される。
 学校近くの公園。
 そこで西雅樹と缶コーヒーを飲んで座っている。
 この状況はなんなんだ。
 類沢に用があるんだろ。
 なぜ俺の所に来るんだ。
 わからない。
 無糖を飲み干し、投げた缶がゴミ箱に吸い込まれる。
 「っしゃ!」
 ガッツポーズを取る雅樹に、ただ唖然とするしかない。
 それともなにか。
 拍手したほうが良かったか。
 俺はヤケになりながらコーヒーを飲み干した。
 缶は横に置く。
 「悪いね、急に」
 「いや、別に」
 「昨日見たとき、あの学園の制服着てたからさ。つい、待ち伏せ」
 コメントに困る。
 俺は曖昧に答えながら脳をフル回転させた。
 コイツの目的はなんだ。
 俺に用があるらしい。
 わざわざ学園まで来て。
 夕日が影を飴細工みたいに伸ばしてゆく。
 冷たい風が吹く。
 「俺は西雅樹。隣街の高校の三年だ。ま、昨日雅先生に聞いたよな……そっちは?」
 「宮内瑞希……三年」
 「タメだったんだ」
 ええ。
 俺も意外だよ。
 雅樹を観察する。
 高校三年?
 高校生?
 嘘だろ。
 そう言いたくなる。
 ベンチの背にもたれる。
 俺は向かいの木に。
 なんとなく、並びたくなかった。
 「宮内って呼んでいいか」
 「別に。じゃあ、西でいい?」
 「あぁ」
 西は少しガードを解いた笑みを浮かべた。
 それから真顔になる。
 「真面目に答えて欲しいんだけど」
 早口で言われ、つい頷く。
 「雅先生に脅されてる?」
 オドサレテル?
 久しぶりの感覚だ。
 相手が何を意味しているかわからない。
 「家に行かされてるのか?」
 なるほど。
 西は俺が類沢と家に来たのが引っかかっていたのか。
 なんで?
 なんで第三者が気にする。
 あんたは類沢のなんなんだ。
 「ムリヤリだったら言ってくれ。俺がなんとかするからっ!」
 言葉を失う。
 なんつった。
 この男。
 「……なんとか、する?」
 「ああ」
 西。
 いきなり現れた男。
 だけど、わかる。
 コイツは俺より類沢を知っている。
 「俺、十月まで雅先生の生徒だったんだよ」
 「え」
 類沢が来たのは、十一月。
 養護教諭の産後休暇の代わりに。
 え?
 なら、そのまえは……
 そのまえは、西の学校にいた?
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