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どこまでも玩具
第11章 立たされた境地

 「あの先生の性格は嫌ってくらいに知ってる。なぁ、宮内」
 西が表情を堅くする。
 何を言うつもりだ。
 身構えてしまう。
 夕日が沈む。
 二人の影が、地面に溶けていく。
 「一緒に裁判に出てくれないか」
 カラスの声が混じる。
 幻聴だって思うほど。
 「雅先生を訴えないか」




 ベッドに寝転がる。
 そういえば、なんで類沢は今日に限って放課後来なかったんだろう。
 来れば良かったのに。
 そしたら、西に会わずに済んだ。
 あれ。
 会いたくなかった?
 ああ。
 会いたくはなかった。
 あんなこと聞くつもりは無かった。
 類沢を訴える?
 馬鹿みたいな話。
 「……訴える?」
 俺は天井からタンスに目を移した。
 それから、いつかのビニール袋に。
 見たくない玩具が詰まった袋に。
 俺は、類沢を訴えたかったんじゃなかったっけ。
 許さないって。
 保健室ってワードすら拒絶反応出てさ。
 「そうだよ」
 体を起こす。
 嬉しいことじゃん。
 西と一緒に裁判に出る。
 証拠はそろえてるって云ってた。
 絶対有罪じゃん。
 これで、二度と……
 「……顔見なくて済む」
 ボフン。
 布団にうずくまる。
 違う。
 ギュッと握る。
 違うよ。
 そんなの望んでない。
 つい前までは嫌だったのに。
 篠田もろとも殺してやりたかったのに。
 離れたくない。
 二度と会えないなんて最悪だ。
 類沢の声が脳裏を侵す。
 ―馬鹿だね―
 本当に酷い男。
 酷い男だ。
 訴えたくなる男。
 なのに……
 ミシ。
 ベッドが軋む。
 俺は布団を抱えて転がった。
 「なんで来なかったんだよ」
 記憶の中の類沢を睨む。
 原因は一つしかない。
 西雅樹。
 なぁ。
 あんたにとって、西雅樹はなんだ。
 そんなに気にする存在か。
 それとも、俺みたいに、玩具としか思ってないのか。
 訊きたい。
 聞きたい。
 知りたい。
 「くそっ」
 枕を壁に投げる。
 バウンドして転がった。
 冷気が体を撫でる。
 もう、深夜だ。
 寒い。

 ストーブを求めて一階に降りる。
 簡易タイプを手にした時、テーブルに目が止まった。
 ―手伝わせてくれないかな―
 類沢が手料理を作ってくれたあの日が蘇る。
 呼び止めたんだよな。
 行って欲しくなくて。
 そばにいて欲しくて。
 一人が怖くて

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