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どこまでも玩具
第12章 晒された命
家に帰ったら、塀にもたれる人物を見つけた。
近寄る前に、相手が気づく。
片手を上げて笑う。
「朝帰りか、宮内?」
「……西」
なんの用だ。
裁判の催促か。
だが、俺も会いたかったのは事実。
確認したいことがある。
「上がったら?」
「どうも」
玄関が閉まる。
その音が心臓を揺らした。
ああ、そうか。
今日かもしれない。
決断の日。
リビングに案内し、テーブル越しに座る。
雅樹の私服は初めて見た。
蒼いジャンパーに、黒いキャップ。
デニムのパンツ。
イメージ通りといえばそれまで。
ただ、なんで上着を脱がないんだろう。
そこだけが違和感だった。
「なんで家知ってたの?」
「仁野有紗って子に聞いた」
有紗……
俺は拳を握った。
なにが嬉しくてあいつにバラされなきゃならないんだ。
本当にいつも余計なことをしてくれる。
まあ、いい。
冬休み明けまでは会わないし。
文句も言えない。
言う気もない。
「彼女?」
「……嫌な冗談」
「ははっ。かわいそ」
「で、何の用?」
飲み物も出さない。
友達でもない。
「あー……いきなり話す話でもないからよ。まず、裁判に出てくれるか教えてくれないか」
「え?」
それが前置き?
本題じゃないのか。
頭が痛い。
机にもたれ、ニヤリと笑う雅樹。
「理由も教えて欲しい」
「出ない」
雅樹が無表情になる。
まるで今すぐ殺してやろうというよな、鋭い目になった。
寒気がする。
紅乃木父の目を思い出す。
「理由は?」
「出来たら言いたくないんだけど……」
「なんで?」
「だって西は……」
「なに?」
これは言うべきだろうか。
いや、言わなきゃ、多分流れは変えられない。
この空気に耐えられない。
口が重い。
「なに?」
雅樹は静かに繰り返した。
「裁判なんてやる気はないんだろ」
「……は?」
俺は椅子を引き、立ち上がった。
「実は、副本を読ませてもらったんだ」
雅樹が黙る。
目が泳いでいる。
その右手が震えながら胸元を漂う。
「あの内容に、どこに俺が必要になる?」
ピタリと手が何かを押さえる。