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どこまでも玩具
第12章 晒された命
 「西。お前は一人で戦うんだろ。俺は先生に虐待なんてされてないし、証言も証拠もない。むしろ邪魔なだけ。俺に何して……いや、類沢先生をどうしたいの?」
 「ははははっ。面白いな、お前」
 いきなり轟いた笑いは朝日すら眩ませる狂気が滲んでいた。
 ああ、やはり俺の勘は間違っていなかった。
 「どうしたいと思う?」
 ここで答えたらどうなるんだろう。
 ―決断の時が来てるよ―
 「さあ。ただ俺は……」
 「協力してくれるか?」
 ガンッ。
 ビクリと肩が震えた。
 机に刺さったものを見て、目を見開く。
 「俺はさ……必死なんだよね。余裕ないくらい」
 クッと手首を曲げ、それを抜き取り切っ先を唇に這わせた。
 今にも肉を突き刺しそうな刃に鳥肌が立つ。
 だが雅樹は気にも留めず、冷めた目で俺を見つめた。
 「協力、してくれるか?」
 「……何を?」
 雅樹は歪んだ笑みを浮かべ、俺の肩を掴んで二階に引っ張り上げた。
 部屋のドアを蹴り開け、ベッドに投げ飛ばす。
 先生でもこんな乱暴なマネはしないんだけど……
 雅樹はバラバラっと音を立てて釘を撒いた。
 一瞬で、部屋が異様な空気に包まれる。
 「なに……して」
 「なぁ、宮内。本題に入ろうか」
 俺は身も起こせずに、雅樹を目で追った。
 ジャンパーの中から小さなボトルを取り出し、手の中で転がす。
 「雅先生は先生の資格があると思うか?」
 「え……」
 そんなの答えは一つだ。
 ない。
 ハッキリ言わせてもらいたい。
 教師を辞めて欲しくないのと、教師が向いていると思うのは違う。
 だが、俺は刺激しないよう口を結んだ。
 「俺はないと思う。だから裁判の条件をああ決めた」
 ボトルの蓋を外す音が聞こえる。
 「免許と一緒に、過去も消せればいいのに……」
 「俺を使って先生呼び出す気?」
 「宮内はこれを飲むだけでいい」
 チャプンと液体が揺れる。
 「なにそれ」
 「睡眠薬」
 「なんで?」
 「聞かれたくない会話だってあるだろ」
 「なんで?」
 「……煩いな。無理やり飲ますのイヤなんだよ」
 雅樹がユラリとベッドに近づく。
 俺はかろうじて右手を上げ、制した。
 「一つ約束したら飲む」
 本当は死んでも飲みたくないんだけど。
 どうせ飲まされる。
 さっきの腕力でわかる。
 こいつは喧嘩慣れしてる。
 「約束?」
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