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どこまでも玩具
第13章 どこまでも
「一つ先に謝らせて欲しい。僕のせいで辛い目に遭わせてしまった……ごめんね、瑞希」
困ったように見上げてくる。
「それからね」
額がくっつきそうなほど、顔を近づける。
逸らそうとした頬に手を添え、無理やりこちらを向かせた。
「お前が何回忘れたって、落としてあげる。その自信があるんだ」
太陽が雲に隠れ、瑞希は影に包まれた。
射竦められたように、僕を見つめて。
「だって」
笑い出したくなる。
その衝動をとどめて、口を開いた。
「お前は、どこまでも僕のものなんだから」
太陽が姿を現して、部屋が光に満ちた。
瑞希は生唾を飲み、深い呼吸を繰り返す。
ずっと握っていた、左手に触れて。
僕は身を起こして、カーテンを開放した。
「とりあえず、医者に知らせなくちゃね。瑞希が起きるのを待っていた人は沢山いるんだ」
類沢は出口に向かった。
その背中を見ながら、瑞希の手が枕を探る。
たどり着いたメモの感触に、体が震えた。
なにがきっかけかなんて、わからない。
全神経が騒いだ。
血がたぎった。
息が止まった。
ぞくぞくと鳥肌が立った。
もう一度、後ろ姿に首を伸ばす。
瞬間、振り向いた僕は、笑顔で叫ぶ瑞希を見た。
完