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どこまでも玩具
第3章 枯らされた友情
紅乃木は金原の靴箱を見つめ、それから腕時計に目を落とした。
七時五分。
携帯を見る。
連絡はない。
鞄を投げ捨てると、保健室の方向に駆け出した。
誰もいない廊下で足音がつんざくように響く。
キュッと音を鳴らして急停止する。
『不在』
これがもし嘘ならば。
これがただの目隠しならば。
紅乃木はポケットを探る。
カチャリ。
常備している針金を二本取り出す。
大抵、公共施設の鍵は他の建物にも使われていることが多い。
型さえわかれば、開けられる可能性はぐっと広がる。
昔、よく父に監禁されたこともあり、鍵の開け方は自分で学んだ。
あのおぞましい行為から逃れられるなら、ピッキングなどいくらでもやった。
慎重に針金を曲げる。
教室は何度か開けたことがある。
教師にバレれば、職員会議ものだが、証拠も残らない。
今、金原の為にこれを使う。
紅乃木は深く息を吸った。
「……あッッ……は」
そして、聞いてしまった。
扉の向こうから確かに
金原の声がした。
いや、金原じゃないかも知れない。
だって親友の喘ぎ声など聞かないから。
だが、紅乃木の手は止まった。
鍵穴に針金を挿すことも無く。
ドクン。
ドクン。
心臓が脈打つ。
怖い。
「も……やめッ」
怖い。
カチン。
針金が手から落ちる。
そして
紅乃木は
背を向けて
走り出した。
怖かった。
過去の自分を目撃してしまう気がして。
あの扉を開けたら、見てしまう。
父との行為を。
金原を助けなきゃなのに。
逃げ出した。
玄関に辿り着き、膝をつく。
そのまま肩から崩れた。
卑怯者。
卑怯者っ。
自分を罵る叫び声。
あぁ、卑怯だ。
汚い卑怯者だ。
金原、約束破っちまったな。
「……あーあ。馬鹿」
目頭が熱くなる。
携帯が鳴り、メールを見る。
瑞希から。
『本当にありがとう。二人に話して良かった』
その画面が責めてくる。
お前は何を聞いたのか。
お前は何を誓ったのか。
お前は何を庇ったのか。
携帯を閉じる。
ポタリと涙が落ちた。
暗闇の中でもハッキリ見えた。
―……金原までさ、襲われたらどうすんだよ―
―金原まで弱み掴まれたら手も足も出ないよ―
恐れた事態が起きている。
止めなきゃ。
なのに。
七時五分。
携帯を見る。
連絡はない。
鞄を投げ捨てると、保健室の方向に駆け出した。
誰もいない廊下で足音がつんざくように響く。
キュッと音を鳴らして急停止する。
『不在』
これがもし嘘ならば。
これがただの目隠しならば。
紅乃木はポケットを探る。
カチャリ。
常備している針金を二本取り出す。
大抵、公共施設の鍵は他の建物にも使われていることが多い。
型さえわかれば、開けられる可能性はぐっと広がる。
昔、よく父に監禁されたこともあり、鍵の開け方は自分で学んだ。
あのおぞましい行為から逃れられるなら、ピッキングなどいくらでもやった。
慎重に針金を曲げる。
教室は何度か開けたことがある。
教師にバレれば、職員会議ものだが、証拠も残らない。
今、金原の為にこれを使う。
紅乃木は深く息を吸った。
「……あッッ……は」
そして、聞いてしまった。
扉の向こうから確かに
金原の声がした。
いや、金原じゃないかも知れない。
だって親友の喘ぎ声など聞かないから。
だが、紅乃木の手は止まった。
鍵穴に針金を挿すことも無く。
ドクン。
ドクン。
心臓が脈打つ。
怖い。
「も……やめッ」
怖い。
カチン。
針金が手から落ちる。
そして
紅乃木は
背を向けて
走り出した。
怖かった。
過去の自分を目撃してしまう気がして。
あの扉を開けたら、見てしまう。
父との行為を。
金原を助けなきゃなのに。
逃げ出した。
玄関に辿り着き、膝をつく。
そのまま肩から崩れた。
卑怯者。
卑怯者っ。
自分を罵る叫び声。
あぁ、卑怯だ。
汚い卑怯者だ。
金原、約束破っちまったな。
「……あーあ。馬鹿」
目頭が熱くなる。
携帯が鳴り、メールを見る。
瑞希から。
『本当にありがとう。二人に話して良かった』
その画面が責めてくる。
お前は何を聞いたのか。
お前は何を誓ったのか。
お前は何を庇ったのか。
携帯を閉じる。
ポタリと涙が落ちた。
暗闇の中でもハッキリ見えた。
―……金原までさ、襲われたらどうすんだよ―
―金原まで弱み掴まれたら手も足も出ないよ―
恐れた事態が起きている。
止めなきゃ。
なのに。