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どこまでも玩具
第4章 放たれた憎悪

「みぃずきには話しとこうと思ってさ……」
「何がだ?」
紅乃木はナイフの柄を回す。
風を切る音が妙に鳴る。
彼は唇をすぼめて囁いた。
「金原を救えなかった理由?」
オレはどう切り出せば良いかよくわからなかった。
有紗を前に、ただ耳を傾けるしかまだ出来ない。
瑞希は聞いてはいけない気がした。
それが良心からかも定かじゃない。
「だって本人の口から聞いたんだよ! 僕は女の子に興味ないの……って。それなのにうちのクラスの女子なんか全員、ぜんっいん虜になっちゃってるんだから信じやしない……嘘つきってばっかり言うの」
「まずさ」
二人は足を止める。
「……有紗は信じてるのか?」
彼女は目を見開いて、叫ぼうとした口を無理やり閉じた。
それから目線を泳がせ思案する。
髪を弄るのは癖だ。
久しぶりの有紗の仕草を、ただ眺めていた。
「しん……じてないって言ったら嘘になる。でも、一番は周りが信じることなの! そしたらアイツなんか、類沢せんせーなんか誰も相手にしないんだから」
やっぱりか。
瑞希に聞かせなくて良かった。
有紗はショックを受けただけじゃない。
目的は類沢への復讐。
大方、冷たくフられでもしたんだろう。腹いせって奴だ。
真っ赤になる元カノを見下ろす。
これも、類沢の計算のうちだ。
たとえ不利になる噂だって、広がらなければ意味がない。
広がらなければ、広げようとした本人は疎外される。
自然と口封じになるわけだ。
現に有紗は随分立場が変わってしまったのだ。
「う……あーちゃんとかが他人みたいな目で見るんだよ~……ヤだよ」
顔を覆って泣き出す彼女の肩を抱く。
友人として。
「オレは信じる」
しかできない。
「……本当に?」
「信じるよ」
その時の有紗の表情は忘れられない。
今までの憂いと、仲間を得た恍惚感と、利用の手順を考える支配欲。
全てがない交ぜになった、見てられない顔だった。
こんな女だったっけ。
少し虚しくなる。
だが、放っておいたら壊れてしまう。
だから、救わなきゃ。
「で、有紗はどうなって欲しいの?」
「…」
途端に黙る。
まだ信用しきってないのか。
「どうしたいの?」
「せんせーを……」
重い口が突然開いた。
「私のものにしたい」
横顔が本気だと告げていた。
「何がだ?」
紅乃木はナイフの柄を回す。
風を切る音が妙に鳴る。
彼は唇をすぼめて囁いた。
「金原を救えなかった理由?」
オレはどう切り出せば良いかよくわからなかった。
有紗を前に、ただ耳を傾けるしかまだ出来ない。
瑞希は聞いてはいけない気がした。
それが良心からかも定かじゃない。
「だって本人の口から聞いたんだよ! 僕は女の子に興味ないの……って。それなのにうちのクラスの女子なんか全員、ぜんっいん虜になっちゃってるんだから信じやしない……嘘つきってばっかり言うの」
「まずさ」
二人は足を止める。
「……有紗は信じてるのか?」
彼女は目を見開いて、叫ぼうとした口を無理やり閉じた。
それから目線を泳がせ思案する。
髪を弄るのは癖だ。
久しぶりの有紗の仕草を、ただ眺めていた。
「しん……じてないって言ったら嘘になる。でも、一番は周りが信じることなの! そしたらアイツなんか、類沢せんせーなんか誰も相手にしないんだから」
やっぱりか。
瑞希に聞かせなくて良かった。
有紗はショックを受けただけじゃない。
目的は類沢への復讐。
大方、冷たくフられでもしたんだろう。腹いせって奴だ。
真っ赤になる元カノを見下ろす。
これも、類沢の計算のうちだ。
たとえ不利になる噂だって、広がらなければ意味がない。
広がらなければ、広げようとした本人は疎外される。
自然と口封じになるわけだ。
現に有紗は随分立場が変わってしまったのだ。
「う……あーちゃんとかが他人みたいな目で見るんだよ~……ヤだよ」
顔を覆って泣き出す彼女の肩を抱く。
友人として。
「オレは信じる」
しかできない。
「……本当に?」
「信じるよ」
その時の有紗の表情は忘れられない。
今までの憂いと、仲間を得た恍惚感と、利用の手順を考える支配欲。
全てがない交ぜになった、見てられない顔だった。
こんな女だったっけ。
少し虚しくなる。
だが、放っておいたら壊れてしまう。
だから、救わなきゃ。
「で、有紗はどうなって欲しいの?」
「…」
途端に黙る。
まだ信用しきってないのか。
「どうしたいの?」
「せんせーを……」
重い口が突然開いた。
「私のものにしたい」
横顔が本気だと告げていた。

