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どこまでも玩具
第7章 阻まれた関係
「当たりなさいよ!」
「嫌に決まってんじゃん」
女ってこういうところが面白い。
当たりなさいってなんだ。
しかし、同時に呆れる。
俺のことを、類沢の彼女だとでも思ってるのか。
しかも金原が襲われたと聞いておいて、一度たりとも温度が変わっていない。
どういう頭しているんだ。
金原と付き合ってたことはもう忘却の彼方なのだろうか。
冷たい風が吹きすさぶ。
寒い。
さっさと済ませたい。
ノートだってあと三冊写さなきゃならない。
「そんなに知りたきゃ、本人に聞け」
踵を返すが、ブレザーを引っ張られる。
なんなんだ。
「知ってるよ! あんたらが類沢センセが嫌いなことくらいっ。センセが好きなあたしが嫌いなことくらい! でもアドレスだけでいいの。教えてよ!」
「本人に訊けって」
大体類沢とのメールのやりとりを思い出すと教えることすら反吐が出る。
内容なんてホテルの指定くらいだ。
彼とメールがしたいなんて気が知れない。
「類沢センセがなんて言ったか教えたげよっか!?」
有紗が怒りながら叫ぶ。
「瑞希に訊けばいいじゃない……だよ?」
「……」
あ、の野郎。
俺は目眩を感じつつ壁にもたれる。
家に来たのはやっぱり気まぐれか。
よくそんなこと言えるものだ。
頭を手で支える。
瑞希に訊けばいいじゃない?
自分が男に犯されてるのに、その男を女に紹介するのか。
意味がわからない。
狂ってる。
この状況が狂ってる。
俺は有紗を押しのけ、屋上を後にした。
保健室に走る。
云いたいことがある。
もうやめろとか。
なんなんだとか。
いい加減にしろとか。
ありがとうとか。
あぁ、これは云わなくていいや。
考えながら走っていたせいか、階段で教師にぶつかった。
お互いによろける。
急いで謝ると、彼の落としたプリントを拾って渡す。
「走ると危ないよ~」
また目眩がする。
雛谷。
昨日の今日で会うなんて。
なぜか血の気が引いて、俺は走り去った。
その背後で雛谷が「やっぱ瑞希が一番かわいぃ……」なんて呟いていたなど知らずに。
「類沢っ」
保健室に入ると、数人の女子に囲まれている白衣を見つけた。
きゃあきゃあ騒いでいた女子がびっくりして黙る。
「やぁ、瑞希。どうかした?」