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どこまでも玩具
第7章 阻まれた関係
どうかしたって。
どうかしたっ……て。
馬鹿なのか。
確信犯なのか。
「ちょっと……呼び捨て?」
「なにあれ? 宮内?」
「類沢センセにしつれーい」
忘れていた。
この男の周りにいるのは女子だということを忘れていた。
俺は扉に手をかけたまま固まる。
「えと、類沢先生お時間よろしいです、か?」
口が痛い。
喋りにくい。
類沢は一瞬目を見開いて、ニヤリと笑った。
見逃すものか。
俺は目を細めて睨みつける。
「じゃあ、後でねみんな」
意外にも類沢は立ち上がった。
「ええ!」
「なんでですかぁ」
「私たちの方が先ですよ!」
「類沢センセ、やだよ」
その波の中を押して、外に彼女達を出す。
まだ叫びが聞こえる中、類沢は溜め息を吐いて俺の背中を押してソファに座らせる。
「助かったよ」
「いつもあんなんなんですか」
俺の方が溜め息つきたい。
今日はポニーテールじゃなくて、上側だけを結んで垂らしている。
思い切り女性の髪型だ。
睫毛も長く見える。
また頭痛してきた。
「で、何の用? そっちから来るの珍しいね」
当たり前だ。
「……なんで教えた?」
カタリと音を立て、類沢が椅子に座る。
カーテンが背後で揺れる。
寒い風が吹いても開けているのがまた、保健教師らしくて苛ただしい。
「メルアド、俺が知ってることですよ。有紗に……仁野に教えましたよね」
「そうだね」
言葉が続かない。
「それがどうかした?」
白衣が揺れる。
カーテンと混ざる。
この男は……。
俺は脱力して頭を抱える。
「……てことは、あなたは俺を犯したこともベラベラ喋ったってことですね」
「それは違う」
あくまで落ち着いている類沢に怒鳴りつける。
「何が違うんだよっ! どうせ有紗に身を引かせるために全部話したんだろうが! どうせそんな噂が立とうが俺がどうなろうが関係ないもんなっ。一瞬でも優しいと思った俺が馬鹿だったよ、この最低野郎!」
叫び終わると同時に駆け出した。
また捕まえられるのが怖かったってのもある。
ただ、一番は類沢の顔を見ていられなかったからだ。
叫んでいる間に、みるみる無表情に固まっていくあの顔を。
それが何より怖かった。
頭が痛い。
本当に痛い。
次の時間なんだっけ。
どうでもいいけど。