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どこまでも玩具
第7章 阻まれた関係
「失礼しまー……」
「瑞希を見たかい?」
「あれ? あんたのとこにいると思って来たのに」
類沢は、金原と紅乃木を見てうなだれる。
「昼休みからいないんだよ」
今は六限の休み時間。
類沢は時計を一瞥して、椅子にもたれかかった。
「ここじゃないってことは……部室かな?」
「いや、理由がないだろ」
「まさか……反省室?」
ガタッ。
類沢は目を見開いて立ち上がった。
反省室。
そのワードが導く人物は一人。
「びっ……くりした。まさかセンセ瑞希をあそこに隠して」
「雛谷だ」
「え?」
二人が固まる。
その眼には混乱と、焦燥が浮かぶ。
突然類沢は保健室を飛び出した。
「ちょっ」
「雛谷?」
残された二人は、顔を見合わせ首を傾げた。
なぜ、今雛谷という人物が。
類沢の背中を見て問いかける。
あんたと雛谷はどんな関係が。
職員室の扉を開ける。
新米の女教師がハッと此方を見た。
「類沢先生、どうしたんですか?」
「雛谷先生に用があるんです」
一つ奥のテーブルで手が上がる。
「ヒナヤン先生なら化学準備室にいますよー」
「ありがとうございます、波賀先生」
がたいの良い国語教師の波賀は、パソコンから目を離さずにヒラヒラと手を振った。
化学準備室か。
すぐに職員室から出る。
授業が無いといいんだが。
ガラ。
薬品の臭いが鼻につく。
顔をしかめて類沢は中に入った。
カチャカチャと物音がする方に足を運ぶ。
白衣が見えた。
「雛谷先生?」
音が止まる。
カールした茶髪が、殺風景な部屋で濃く存在感を放っている。
「おやぁ、類沢先生じゃないですか」
雛谷は立ち上がって服の埃を払う。
「何か、仕事中でしたか?」
「いえいえ。授業も無いし、膨大な量の薬品を整理していただけですよ」
「……それは良かった」
類沢は低く呟くと、雛谷の白衣の襟元を掴んでそばの机に押し倒した。
資料や瓶が音を立てる。
二つの白衣が交わる。
堅い机に押し付けられた雛谷は、目を細めて犯人を睨んだ。
「痛いですよ」
だが、余裕がある。
「なら、もっと痛くしてあげようか?」
しかし、類沢にはそれを上回る冷静さがあった。
雛谷の頬に手を滑らせ、ニヤリと笑う。
流石にその顔は雛谷を怯えさせた。
「正気、ですか?」