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どこまでも玩具
第7章 阻まれた関係
 机が軋む。
 雛谷はなんとか機を見て抜け出そうとするが、首もとを抑えられ胸にのし掛かられれば逃げようがない。
 目の前にある類沢の顔によぎる影が、一層不安を色濃くさせる。
 閉まっている扉を見る。
 誰か来たら、どちらが困るのか。
 そんなことすら考えてしまう。
 類沢は、そんな雛谷の心を読み取り微笑んだ。
 「一つ、答えるだけでいいよ」
 口調が変わるだけで別人だ。
 雛谷は生唾を呑んだ。
 「瑞希に手、出した?」
 いつもと変わらない声。
 女生徒相手のような明るい声。
 だからこそ、余計に怖い。
 むしろ低い声で圧した方がマシだ。
 「出してないと言えば解放してくれるんですか?」
 「嘘を吐いたら許さないよ?」
 疑問に疑問で返す。
 許さないけど、それでも吐く気?
 たった二分で形勢は類沢に傾いた。
 カチカチ。
 時計が鳴っている。
 あと、三十分で放課後だ。
 このまま有耶無耶にする気はない。
 ギリ。
 「は……ッッ」
 捻り上げた襟が雛谷の首に食い込む。
 「ぁ……はは。アナタって怖い人ですよねぇ」
 辛そうに息をしつつも雛谷はニヤリと笑って言う。
 「こうやっ……て……力づくで瑞希も犯したんだ?」
 手から力が抜ける。
 類沢は無表情になり、自分の手を見つめた。
 拘束から逃れられない雛谷は、ただその様子を窺うしかない。
 「瑞希ね、アナタのせいで人に触られそうになると泣き叫ぶんですよ……ごめんなさい、ごめんなさいって謝りながら」
 「……」
 「大丈夫だって云おうが、アナタがそこにいなかろうが関係ない。無理やり犯された記憶がそうさせてるんですよ」
 畳み掛ける勢いで雛谷は叫ぶ。
 「瑞希をどうこう言う権利はないんじゃないですかあ!?」
 余韻が響く。
 同時に嗤い声も。
 雛谷は唖然としてその声を聞く。
 「……バカだね」
 類沢はそっと身を屈めると、突然唇を奪った。
 余りの出来事に雛谷は反応出来ない。
 舌を絡めとられ熱い息が逆流する。
 「んん、む……ッッ?」
 なんで。
 なんで。
 そう言う目を眺めて、さらに激しくする。
 ガリッ。
 「あッッ……ぐ」
 雛谷は口を押さえて悲鳴を噛み殺す。
 その手の端に血が付いている。
 「ふふ……この……狂人がぁっ」
 類沢は唇に指を這わせ、鋭く睨む。
 「瑞希からしたら狂ってるのはどっちかな」
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