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初恋のひと
第3章 理由
思ってもいなかった娘の本心にショックを受けた。
今まで頑張ってきたのが虚しく思えて、喉がキュッと締め付けられた。

「めっちゃ腹立ったんですよ。
けど、思ったんです。
なんで、俺はこんなに腹立ててんだろ?って。
間中のことなんて、嫌いだし、母親と仲が悪くたって関係ないじゃないか。
何でだ?と考えた時に、わかったんですよ。
美鈴さんを悪く言われてるのが許せなかったんだってこと。
いつも青臭い正義感振りかざしてるくせに、一番身近で傷ついてた母親に対して、それはないだろ?って。
で、決めたんです。
間中が母親を見捨てたいんなら、俺が美鈴さんを貰うって。」

「何言って…」

「俺、美鈴さんが好きです。
女として、好きです。
もし、美鈴さんが嫌だっていっても、俺と付き合ってもらいます。
さっき写真撮ったのわかってますよね?
あれは保険です。
美鈴さんが俺から離れていかないように。」

何も言えなくなった私の方に向いて、
"俺を拒否らないでくださいね"
と、唇を重ねてきた。

そっと唇を割り、舌が入り込んでくる。
二人の舌が絡み合い、唾液が溶け合う。
それはまるで何かの儀式のようで…私はただ静かに受け入れたのだった。
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