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宵闇
第9章 溶ける
「……どう? 少しはすっきりした?」
すべて吐き出し、ひく……としゃくりあげるだけになった私に静かにかけられた言葉。
こくん、と頷いて、そっと身体を離した。
「……あ。目、真っ赤」
私の顔をのぞき込むようにして、葉月くんが言う。
「やだ、もうっ」
思わず顔を背けた。
恥ずかしい。
きっと顔もぐちゃぐちゃになってるに違いない。
慌ててティッシュで涙を拭いながらも、葉月くんのその明るいトーンの声につられるかのように口元は緩んでしまう。
「たまってるものは吐き出さないと。
そのために僕がいるんだから」
ね? と、頬にかかる髪をすっと耳に寄せてくれる手。
火照った部分に少しひんやりと感じた、葉月くんの指先。
「……なんて偉そうなこと言って。
琴音ちゃんがそんな気持ち抱えていたなんて気づきもしなかった。ごめん」
首を振りながら感じていたのは、心が明らかに楽になっていること。
……それだけでもう、充分だった。