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宵闇
第9章 溶ける
「──で? そのあとも琴音ちゃんが拒否しないのをいいことに道具扱いしてさんざんやっといて、挙げ句の果てに、反応が冷めてて男としてキツかった、だっけ?」
確かにそれは私が言った内容。
けれどあらためて口にされるとたまらなくなり、目を伏せ、言った。
「……でもちゃんと断らなかった私もやっぱり悪かったんだと思う。
──道具、とか……それも私がなんとなく思ってただけで、先輩にはそんなつもりなんてなかったのかもしれないし────」
「断らなかったんじゃなくて、断れないようにされたんだって」
「え?」
「だって言われたんだよね? 初めてのとき。
……好きじゃないから抵抗したんだろ、って」
「あ、うん……」
そう。
あの翌日、あの公園で、そう聞かされた。
「それで抵抗したらまた責めるんだよ。やっぱり俺のこと好きじゃないから嫌なんだろ、とか。目に見えてる」
……そう。
だから私はいつも拒むことなく応じていた。
あんな喧嘩みたいな言い合いになるのはもういやだった。
自分の言葉がちゃんと相手に届かないことの苦しさ。
それは本当に……疲れるから。
それだったらもう、相手に従っていた方が、まだ────。
「琴音ちゃんは縛られたんだよ、そういう言葉で。
抵抗なんてできないように精神的にね」
続けて落とされた言葉に、思わず強く噛んだ唇が痛い。
「琴音ちゃんは自分のものだ、っていう征服欲を満たすためだけにやって……なのに琴音ちゃんの反応を責めるなんて、どれだけ自分勝手なの? その男」