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宵闇
第9章 溶ける
は……と乱暴な溜め息が続く。
葉月くんがそんなふうに言葉を口にするところを、そんな態度になるところを初めて目にした。
驚きと、戸惑いを隠せず、私はいつのまにか顔を上げ、葉月くんを見つめていた。
「道具扱いとか──男がどうこう言おうと、女の子がそう思っちゃうようなことを実際してるってことだから。
……だからそんなふうに相手をかばわなくていいよ」
「葉月くん……」
「会うとすぐにそればっかり?」
「……ん。先輩んちに行くと……そうなってた、かな」
「内容も一方的なんでしょ?」
一方的──あれはそう言っていいんだろうかと、ほかに経験のない私が言い淀んでいると
「自分だけ満足したらあとは終わり?」
ああ、とその言葉に、曖昧に頷く。
「琴音ちゃんのことは気持ちよくしてくれないんでしょ?」
続けてかけられたその言葉の意味を再び考えた。
……気持ちよく、って何だろう。
あれは気持ちよくなれる行為なの?
男の人が気持ちよくなるために女の人を使う行為なんじゃないの?──そんなふうにさえ思えてしまっていた私には、答えなんてどう考えてもわからない。
黙りこんだ私に、葉月くんが呟く。
「……気持ちよさも教えてもらえずに相手だけが満足する一方的なセックスばかりなんて……琴音ちゃんが道具扱いされてるって思うのも当然だよ」
それは私を、肯定してくれる内容で。
「琴音ちゃんが悪いとこなんてどこにあるの?」
……その言葉────。
じわり、とまたこみあげてくるもの。
「……っ」
また、こぼれていく。
「琴音ちゃんは全然悪くない」
……ずっと、そう言ってほしかった。
本当は誰かに、その言葉をずっと言ってもらいたかった────。